最新記事

ビジネス

IQより重要なEQとは? 人生の勝負を決めるのは「社会に出て活躍する力」だ

2022年11月1日(火)16時55分
永守重信(日本電産 代表取締役会長) *PRESIDENT Onlineからの転載

sinseeho - iStockphoto


京都先端科学大学の理事長としての活動も広く知られる永守重信・日本電産会長は、採用する新卒社員のなかで、一流大学出身者より三流大学出身のほうが活躍する例が多くあることにかねて疑問を抱いていた。そこで一人一人の仕事の成果データを取ってみたところ、ある意外な結果が示され、「結局は情熱と教育がすべてを決める」「IQよりもEQ(感情指数)が大切」と確信するにいたったという──。

※本稿は、永守重信『大学で何を学ぶか』(小学館新書)の一部を再編集したものです。

一流大学卒も三流大学卒も、仕事の成果は変わらない

日本電産では、これまで多くの大卒・院卒者を採用してきた。だが、あるとき私は「社員の出身大学と仕事の成果に、どのくらい相関関係があるのだろうか」と疑問に思い、直近十数年で採用した新卒の社員一人ずつについて、仕事の成果のデータをとってみた。

すると、一流と呼ばれる大学を出た社員も、世間では三流と呼ばれる大学を出た社員も、入社後10年ほどの時点では仕事の成果に大きな差がないことがわかった。

しかし、それは以前からうすうす感じていたことだった。

あてにならない「偏差値」

我が社は、1973年の創業当初は知名度のない零細企業に過ぎなかった。当然、新入社員として応募してくる学生にも、いわゆる一流大学の者はほとんどいない。

はっきり言って大学名も有名でなければ、学業成績もけっして良くはない。そんな学生たちを我が社では徹底的に鍛えてきたが、それによって自らの能力をぐんぐん伸ばし、会社を背負うほどまで大きく成長した者も多かった。

会社が大きく成長していくにつれ、2000年頃からは一流と呼ばれる大学からもたくさんの学生が応募してくるようになった。

だが、そうした学生たちが必ず成果をあげているかといえば、そうではないのだ。むしろ偏差値の高い大学の出身者には真摯(しんし)に学ぼうという気持ちが薄く、成果をあげられない者も多かった。同じ入社年次でも、三流と呼ばれる大学出身の社員のほうが活躍していることもあった。

そうしたことが、このデータによってはっきりわかったのである。そして、こう思わざるを得なかった。「何のために一流大学卒を採っているんだ。いったい偏差値とは何なのだ」と。

社会に出て活躍できる人、できない人

私のみる限り、偏差値の高い大学を出ているのに成果をあげていない人というのは、与えられた仕事はうまくこなすものの、自分から率先して仕事をとってきたり、創意工夫して良い方法を考え出したり、状況の変化に応じて自ら判断して動くことが少ない。

一般的に上司の指示を待っている「指示待ち族」が多いように思う。

一方、偏差値の高い低いにかかわらず、何かに打ち込んできた人や個性の光る人は、何でも前向きに取り組み、人が嫌がるような雑務もこなす気概がある。こうした人たちは、自ら問題意識を持って仕事に臨むため、みるみる実力をつけていき、入社してから数年後には大きな成果を出している。

結局、入試のときの偏差値が高い大学を出たからといって、社会に出てから活躍できるというわけではないのである。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ゴールドマン、24年の北海ブレント価格は平均80ド

ビジネス

日経平均は3日ぶり反発、エヌビディア決算無難通過で

ワールド

米天然ガス生産、24年は微減へ 25年は増加見通し

ワールド

ロシアが北朝鮮に対空ミサイル提供、韓国政府高官が指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中