ラグビー「リーグワン」で初年度にチーム再編や廃部が続く理由
「事業運営費のほとんどは人件費」
所属チームの「親会社頼み」から自立的・自律的な経営への脱却が、リーグワンの目標だ。2020年1月、日本ラグビーフットボール協会ラグビー新リーグ法人準備室の谷口真由美室長(当時)は、「新リーグに関する参入要件の骨子について」という文書を公表した。参加を希望するチームに課された「ハードル」だが、そこにはこう書かれている。
■各参加団体は事業機能を持つこと。
■事業機能とは、チーム運営・収益事業すべての責任者となる事業責任者の設置、収支の透明化、主催興行(収益事業)体制の整備を言う。
■1部リーグは、1試合当たり15000人の観客動員を目指す。
ラグビーのトップチームは年間で最低でも約10億円の事業運営費がかかるとされる。あるトップチーム関係者は言う。「ほとんどが人件費。外国人有力選手10人と外国人監督で5億円から6億円かかる。さらに選手を40人から50人保有すると合計15億円近くになる」
NTTの新チームは25億円の資本金でNTTが20%、NTTドコモとNTTコミュニケーションズが各40%を出資する。この金額についてNTTドコモ広報部は「単純に2チーム分の運営費を足したものではない。新チームとレッドハリケーンズ、両方の事業規模は現在、検討中」と説明する。
現在リーグワンで2位、最後のトップリーグ王者である埼玉パナソニックワイルドナイツは、4月1日から分社化されたパナソニックスポーツ株式会社の傘下に入った。飯島均ゼネラルマネージャーは話す。「企業スポーツなので毎年の予算規模は会社から『前年比何%増、何%減』で示される。我々はその中でやりくりするしかない」
ワイルドナイツの初年度の事業見通しは20億円近い。ホームゲームが年8試合でチケット収入は年間5億円前後が目標だ。一方で、ホームゲームを主催するとイベント、警備、グッズ販売などに様々な運営コストもかかる。3年後の事業規模は30億円を目標とするが、自前の興行収入は6億円で、残り24億円の半分をスポンサーなどの外部収入、半分を親会社であるパナソニックが負担する見込みだ。
ワイルドナイツのようなリーグ内でも比較的大きな事業規模、そして好成績を誇る「優等生」でも、まだ事業総額の25%程度しか自前で稼ぐことができていない。観客増が不可欠だが、コロナ渦の影響で現段階のD1平均観客数(第12節終了時点)3876人にとどまっている。昨年度、前身である最後のトップリーグの平均観客数3425人を上回っているものの、リーグ目標である1万5000人には遠い。同じコロナ禍に苦しみながら、サッカーのJリーグのJ1各チームは現在、軒並み1万人以上の観客数を実現している。