最新記事

ビジネス

新入社員がどんどん辞める会社に共通する「上司あるある」 価値観の押し付けで若手のやる気が低下

2022年4月11日(月)12時43分
斉藤 徹(起業家、経営学者、株式会社hint代表、株式会社ループス・コミュニケーションズ代表) *PRESIDENT Onlineからの転載

「ダブルループ学習」は、複雑な問題の根本を考え、真因を改善することです。発生した問題に対して、既存の目的や前提そのものを疑い、そこから軌道修正を行います。過去の学習や成功体験をもとに問題解決を図る「シングルループ学習」では、本質的なエラーは除外できません。

多くの場合、短期業績に直結する対症療法は行っても、根治療法については時間の経過とともにウヤムヤになってしまうことが多いですが、より重要なのは根治療法なのです。

問題の真因を発見する「ダブルループ学習」

「やる気を出せ」という上司は論外

「透明のチカラ」は、よく先進的な自律型組織が、統制の代わりに導入しています。例えば、企業は経費を削減するために、何重にも管理者を配置し、稟議システムで「統制」してきました。

では、経費をすべて「透明」にしたらどうなるでしょう。誰が何にいくら使用したかが誰でも閲覧できるようになれば、説明責任が生じ、共感や評価を得られない無駄な経費は激減していくでしょう。

「だから僕たちは、組織を変えていける」定期的な「ゼロベース思考」に、問題発生時の「ダブルループ学習」を組み込み、複雑なルールには「透明のチカラ」の活用を考える。これによって組織はリフレッシュされ、チームの「やらされ仕事」は減り、組織のパーパスに基づいて「顧客のため」「社会のため」を自律的に考える余裕が出てくるのです。

ビジネスの場では、社員は常に評価され、賞罰に結びつけられます。失敗をした際に「問題の真因を究明し、そこから学ぶ」という実り多き課題に取り組まず、アメとムチによって「失敗をしないように統制すれば解決する」と考えてしまうのです。

一方で、外発的動機づけに対するデシの見解はこうです。

「報酬は、それとはわからないぐらい目立たずに与えるほどよい。意欲を高めようとして安易に賞罰を用いるときが、メンバーの意欲を最も失わせるときだ。かわりに、人間が持つ心理的欲求が満たされる環境を築くことに、リーダーはもっと努力を傾けるべきなのだ」

チームにやる気を出してほしいなら、リーダーは「やる気を出せ」と厳しく言って管理を強めるのではなく、メンバーが「自分で考え」「能力を発揮できて」「良い関係性でいられる」ための努力をしていきましょう。

斉藤 徹(さいとう・とおる)

起業家、経営学者、株式会社hint代表、株式会社ループス・コミュニケーションズ代表
1985年、日本IBM入社。1991年に独立しフレックスファームを創業。2005年にループス・コミュニケーションズを創業。2016年から学習院大学経済学部経営学科の特別客員教授に就任。起業家、経営者、教育者、研究者という多様な経歴を活かして、2020年からはビジネスブレークスルー大学教授として教鞭を執る。2018年に開講した社会人向けオンラインスクール「hintゼミ」には、大手企業社員から経営者、個人にいたるまで、多様な受講者が在籍し、期を増すごとに同志の輪が広がっている。著書に『だから僕たちは、組織を変えていける』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国版の半導体の集積拠点、台湾が「協力分野」で構想

ワールド

アフガン北部でM6.3の地震、20人死亡・数百人負

ワールド

米国防長官が板門店訪問、米韓同盟の強さ象徴と韓国国

ビジネス

仏製造業PMI、10月改定48.8 需要低迷続く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 7
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中