増加するEVに電力網は耐えきれるか? スマート充電がパンク回避の切り札に
ノルウェーは政府肝いりでEV移行の最先端に立っており、首都オスロでは自動車販売の約4分の3をEVが占めている。地元の変電所の一部は1950年代に建設され、もし、スマート充電が無ければ、オスロは高い経費を投じて電力網を大規模刷新する必要が生じる。
「われわれは電力網に過剰な投資をしたくないため、この状況を切り抜けるにはスマート充電という解決策が必要だ」と、オスロの充電インフラ構築を司るSture Portvik氏は話した。
風力発電も効率化
英コネクテッド・カーブは2030年までに19万カ所に公共充電設備を配置する目標を立てている。それらを通じて消費者の充電パターンを予想して電力事業者に知らせ、再生可能エネルギーが余っている時には低い料金を提示する、といったことが可能になるとペートマンジョーンズCEOは説明する。
現在は風力発電が過剰になると、事業者は風力タービンを止めるよう言われる」が、「スマート充電があれば、その電力をもっと活用できるようになる」という。
英国の電力会社の中には既に、家庭でのスマート充電用にオフピーク料金を提供しているところもあるが、活用しているEV所有者はほとんどいない。
安いEV充電料金を探すサービスを提供している英ライトチャージのチャーリー・クックCEOは「家庭でのスマート充電環境は既に整っている」が、「実態として、そうした(お得な)料金設定の認知度は驚くほど低い」と話した。
ライトチャージは、スマート充電によって英国のEVドライバーは2030年までに100億ポンド(135億ドル)節約できるようになると試算している。
双方向充電が鍵
双方向充電が、今後の鍵を握るかもしれない。
EYのグローバル・エネルギー資源責任者、サージ・コール氏は「恐ろしく高くつく」電力網の刷新よりは、スマート充電と双方向充電の方が賢明な選択肢だと指摘する。
英OFGEMは、スマート・双方向充電によるピーク時の電力使用量削減効果が2050年までに、イングランドで建設されている「ヒンクリーポイントC原子力発電所」の発電量の10倍に達すると予想している。
米国では、スクールバスを使ってEVから電力網に電力を供給する試験プロジェクトが10カ所以上で進行中だ。オーストラリアにも双方向充電設備を開発中の企業がある。
双方向充電の導入を見据える自動車メーカーも増えてきた。米フォード・モーターは太陽光発電企業サンランと提携し、ピックアップトラック「F─150ライトニング」を使って家庭に電力を供給している。
ただ、双方向充電の将来性を信じて追加投資を行ったノルウェーのオスロは、対応車種を導入する自動車メーカーがまだ少ないことに失望している。
Portvik氏は「双方向充電の壁になっているのは、自動車メーカーだ。大手メーカーが取り組みを強化する必要がある」と語った。
(Nick Carey記者 Anthony Deutsch記者)
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