最新記事

住宅ローン

変動金利型と固定金利型のどちらの住宅ローンを選択すべきか──市場動向から最適な住宅ローンの借入戦略について考える

2022年1月26日(水)17時21分
福本勇樹(ニッセイ基礎研究所)

ここでは、2つ目のリスクバッファを持つという対応策について、具体的にその効果について検証してみたい。

以降、首都圏で6,200万円(2021年6月時点の平均水準)の新築マンションを購入する際に、不動産価格分をすべて元利均等返済型の変動金利型住宅ローン(取組時の適用金利:0.4%)の借り入れで賄う場合について、シナリオ分析を行っていく。変動金利型住宅ローンの適用金利が0.4%(一定)で推移し、0年後、5年後、10年後、15年後、20年後、25年後、30年後のどこかで1%、2%または3%%の金利上昇が生じた(上昇後は一定で推移)と仮定して、金利上昇と同時に積み立てた預貯金で繰上げ返済した際の毎月の返済額を計算する。

この例では、変動金利型で借り入れた場合(毎月15万8,218円)と固定金利型(取組時の適用金利:1.2%)で借り入れた場合(毎月18万855円)で毎月の返済額に2万2,637万円の差がある。この差額を預貯金で毎月積み立てていき、繰り上げ返済の原資として用いる。ここでは、繰り上げ返済に借入期間を変更しない「返済額軽減型」を採用する。

図表2に分析結果を示している。適用金利が1%程度の上昇であれば、5年後に金利上昇が生じても変動金利型住宅ローンの方が毎月の返済額が小さくなることが分かる。このまま低金利環境がこの先5年以上継続して、金利上昇幅も1%程度に収まるのであれば、固定金利型住宅ローンで借り入れた気持ちになって変動金利型住宅ローンで借り入れ、返済額の差額を繰り上げ返済の原資として預貯金で積み立てていくのは、それなりに合理性のある判断だということになる。

nissei20220125121302.jpg

一方で、適用金利の上昇幅が2%程度になると、繰り上げ返済を行ったとしても、変動金利型住宅ローンの返済額の方が小さくなるには15年程度低金利政策が継続する必要があることが分かる。このような2%程度の金利上昇のリスクにも備えていく場合には、例えば、住宅ローン減税による所得税控除分も含めて繰り上げ返済の原資を拡大する、ミックスローンで固定金利型の割合を大きくして当初の返済額が大きくなるデメリットを享受して想定以上の金利上昇に備える、といった対応策も合わせて検討していく必要があるだろう。

本稿の分析が、住宅ローンを借り入れる個人の家計管理に寄与できるのであれば幸いである。

[執筆者]
Nissei_Fukumoto.jpg
福本 勇樹
ニッセイ基礎研究所
金融研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター兼任

ニューズウィーク日本版 トランプの帝国
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月10号(2月3日発売)は「トランプの帝国」特集。南北アメリカの完全支配を狙う新戦略は中国の覇権を許し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金融政策巡る次期FRB議長の訴追は「大統領次第」=

ワールド

ロシアとウクライナ、捕虜交換で合意 三者協議2日目

ワールド

米ロ、新START当面順守で合意間近と報道 ロ報道

ワールド

米公務員制度、1世紀ぶり大改革 大統領が5万人の人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 6
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 7
    「反トランプの顔ぶれ」にMAGAが怒り心頭...グリーン…
  • 8
    関税を振り回すトランプのオウンゴール...インドとEU…
  • 9
    習近平の軍幹部めった斬りがもたらすこと
  • 10
    日本経済低迷の主因である「空洞化」をなぜ総選挙で…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    日本はすでに世界有数の移民受け入れ国...実は開放的…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中