最新記事

住宅ローン

変動金利型と固定金利型のどちらの住宅ローンを選択すべきか──市場動向から最適な住宅ローンの借入戦略について考える

2022年1月26日(水)17時21分
福本勇樹(ニッセイ基礎研究所)

金利は上がるのか、上がるとしていつ上がるのか、の予想は難しい。住宅ローンもリスク分散がお勧めだ anilakkus-iStock.

この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2022年01月11日付)からの転載です

1―はじめに

住宅金融支援機構の「業態別の住宅ローン新規貸出額及び貸出残高の推移」によると、個人の住宅ローン借入残高は2021年3月末時点で約207兆円に達した。個人の住宅ローン借入残高が増加基調にある要因として、低金利環境の長期化、住宅ローン減税の順ざや、マンション価格の上昇の3つが挙げられる。

住宅金融支援機構の調査によると、低金利環境が長期化する中で、新規貸出における変動金利型住宅ローンの割合が徐々に拡大しており、2019年度は75%を占めている。

2021年10月時点で、金融機関が提供する住宅ローンの適用金利の最低水準は、変動金利型で約0.4%、固定金利型で約1.2%である。低金利環境だけでなく、利ザヤ確保のため、地域金融機関や新規参入銀行中心に住宅ローン獲得競争が激化していることも、変動金利型を中心に住宅ローンの適用金利に対する低下圧力になっているものと推察される。

また、住宅ローンの借入期間も長期化している。マンション価格の上昇に対して、相対的に取組時の適用金利の水準が低い変動金利型で借り入れ、住宅ローン減税の経済的なメリットも享受しながら、毎月の返済額を抑制する個人が増えているものとみられる。

2―変動金利型と固定金利型のどちらを選択すべきか

取組時は変動金利型の方が固定金利型よりも適用金利が低い。そのため、取組時の返済額(元本返済+利息支払)で比較すると、変動金利型が固定金利型よりも小さくなる一方で、元本返済額のみを比較すると、変動金利型の方が固定金利型よりも大きくなる。また、変動金利型は10年国債利回りなどの市場金利が変動すると適用金利も変動するが、固定金利型は変動しない。よって、将来に金利が上昇すると、変動金利型の適用金利が取組時の固定金利型よりも高い水準になるリスクがある。また、固定金利型はローンの完済までの返済額が確定するので、将来の資金計画を立てやすいという利点もある[図表1]。

nissei20220125121301.jpg

変動金利型を取り組むべきか、固定金利型を取り組むべきかという悩みの根本的なところは、「将来に金利上昇が生じるのか否か、金利上昇が生じたとしてもうまく乗り越えられるのか」という点にあると思われる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米NASA、アルテミス計画で複数社競争の意向=ダフ

ワールド

トランプ氏、習氏と公正な貿易協定協定に期待 会談で

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏との会談「前向き」 防空

ワールド

ゼレンスキー氏、ウクライナ支援「有志連合」会合に出
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 7
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 10
    トランプがまた手のひら返し...ゼレンスキーに領土割…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中