最新記事

自動車

自動運転車の開発競争、先頭ゴールは意外にもトラック?

2021年12月17日(金)13時45分

オクスボティカは、オンライン食品宅配テクノロジー企業の英オカドとも提携している。オカドは、米国の小売チェーン企業クローガーなどのために、サプライチェーンシステムの自動化に取り組んでいる。BPとオカドは、両社ともオクスボティカに投資している。

オカドで先進テクノロジー担当部門を率いるアレックス・ハーベイ氏は、オクスボティカのテクノロジーは「倉庫やバックヤード、道路、あるいは道路脇やキッチンでも活用できる」と話した。

左折は回避

米国の自動運転EVメーカー、アウトライダーが狙いを定めているのは、流通倉庫のバックヤードだ。輸送トラックから切り離されたトレーラーを引き取り、新たにけん引してもらうトレーラーを整列させる作業である。製紙企業ジョージアパシフィックがシカゴに設けている流通倉庫もその一例だ。

アウトライダーは、トラックがトレーラーの接続・切り離しを行うためのロボットアームを開発した。これまでに1億1800万ドルを調達し、アンドリュー・スミスCEOは、今後5年間で自動運転車を数千台まで拡大する計画を口にする。

スタートアップ企業であるアウトライダーは、バックヤード相互をつなぐ短距離輸送も開始したいと考えているが、スミスCEOによれば、公道での運用になると話が複雑になるという。

同CEOは「自動運転テクノロジーは最初のうち大いに喧伝(けんでん)されたが、短期的ソリューションとして最適なのは、限定された環境で、低速の作業が繰り返される流通倉庫のバックヤードでの活用だと分かった」と述べた。

公道での展開には慎重な運用が必要だ。規制の厳しさもあるが、米国のような訴訟社会では、法的な問題に巻き込まれるリスクもある。

オンライン専業の運送保険会社コフィー・ラブズのイアン・ホワイトCEOは、「ブラックスワン」級、つまり非常に低頻度だが巨大な賠償金額を伴う事故が起きれば、展開を急ぎすぎて失敗した企業は一掃されてしまうだろうと話す。「会社の存続そのものが揺らぐことになる」

ガティックのゴータム・ナランCEOは、だからこそ同社は、流通センターと小売企業を結ぶ「ミドルマイル」と呼ばれる流通経路に慎重にアプローチする道を選んだのだと話す。

ガティックが運用するトラックは、直進車両の進路を横切る左折箇所や、学校、病院、消防署、見通しの悪い曲がり角、その他面倒が起きそうな要素を避け、予測可能性の高い短いルートを走る。

「自動運転車連産業が解決しようとしている厄介な状況に片端から取り組んでいるわけではない」とナランCEOは言う。「複雑性という観点から、平穏無事なルートを使って、少しずつ前進している」

ガティックは、ウォルマート、ロブロー・カンパニーズと提携して、安全監視役のドライバーを乗せた自動運転トラックを運用しているが、アーカンソー州ではドライバーを乗せないルートもいくつか使っており、グローバル規模のドライバー不足をチャンスと捉えている。

「非常に切迫したニーズのあるシンプルな利用状況にフォーカスしようと決めた」とナランCEO。「自動運転というテクノロジー自体を目的にしているわけではない」

(Nick Carey記者、Paul Lienert記者、翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・クジラは森林並みに大量の炭素を「除去」していた──米調査
・気候変動による世界初の飢饉が発生か 4年間降雨なく、昆虫で飢えをしのぎ...マダガスカル
・地球はこの20年で、薄暗い星になってきていた──太陽光の反射が低下


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ

ワールド

ベネズエラ沖で2隻目の石油タンカー拿捕、米が全面封

ワールド

トランプ氏関連資料、司法省サイトから削除か エプス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中