世界情勢と経済の今が分かる、教養としての「エネルギー」が学べる3冊
石油を通じて世界が見える
『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』
著者:岩瀬昇
出版社:文藝春秋
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続いてご紹介するのは『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』です。温室効果ガスの排出源となる石油などの化石燃料は、利用の抑制がかつてないほど求められています。一方、足元では原油価格が上昇傾向にあり、電気や食品の値上げにつながるなど、依然として私たちの生活に大きな影響を与えています。
石油資源はいずれ枯渇する――。そのような言葉をどこかで聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。そうしたいわゆる「ピークオイル」という通説が長年、まことしやかに伝えられてきました。一方、右肩上がりと思われた石油の需要が減退して限界を迎える「ピークデマンド」論も登場するなど、石油の需要と供給は、人類の進歩、地球の未来にとって長年のテーマとなってきました。
しかし、そもそも石油とはなんでしょうか。ガソリンや灯油、プラスチックといった石油製品は当然見たことがあっても、そのおおもとの石油それ自体は見たことがない人は少なくないでしょう。本書はそうした石油について理解を深めるのに役立ちます。
タイトルに「誰が決める」とある通り、埋蔵量は石油の掘削技術の進歩とともに変化します。本書は 知っていそうで知らなかった石油の基本について、資源量と埋蔵量の違いや定義、原油が戦略物資となった時代を経て先物取引で売買されるコモディティ商品へと変遷してきた経緯などが、わかりやすくまとめられています。
石油について学ぶことは、日本のエネルギー事情や電源構成の仕組みを知ることにつながり、世界の地政学、もっと身近なところでは食品の値上がりの背景を知ることにも通じています。
本書は、石油を主眼とした本でありながら、サブタイトルで銘打っている、まさに「エネルギー情報学入門」です。