最新記事

経営

業績悪化による「賃金カット」「解雇」が認められるケースとは?

2021年10月15日(金)06時45分
加藤知美 ※経営ノウハウの泉より転載

実際に就業規則や賃金規程を変更する際は、上記の合理的な理由をもとにして、社員の代表や労働組合と協議を重ね、意見の聴収をした上で行うことになります。その後は、書面交付や掲示などの方法により、変更内容をすべての社員に周知させなければなりません。

賃金カットでは不十分...業績不振による「解雇」は?

ここまでは、業績不振による賃金カットについて説明をしてきました。しかし、業績不振の企業のなかには、賃金カットだけでは不十分であるため、社員の解雇も検討しなければならいこともあるでしょう。本章では業績不振による解雇について解説します。

社員の解雇には、"客観的にみて合理的"で、"社会通念上で相当"な理由が求められます。合理性や相当性が認められない場合は、社員の解雇はできないという点は念頭に置いておきましょう。

業績不振を理由とした解雇は、整理解雇の一種となります。整理解雇を行う場合、次の4つの観点から、解雇が認められるか否かが判断されます。

(1)人員削減の必要性
企業経営において、業績不振による解雇に十分な必要性があるかどうか。

(2)解雇回避の努力

解雇に至る前に、配置転換や希望退職者の募集などの別の手段を取るなど、解雇を回避するための企業努力が認められるか。

(3)人選の合理性

解雇対象者となる基準が適正かどうか。

(4)解雇手続の妥当性

解雇の必要性や解雇時期、規模、方法などを、社員や労働組合へ納得がいくように説明したか。

これらの基準を満たした整理解雇である場合は、解雇予告または解雇予告手当の支払いを適切に行った上で、解雇辞令を正式に出すことで解雇を実施することができます。

まとめ

業績不振による賃金カットや解雇について解説しました。賃金カットや解雇は、社員の生活に大きな影響を与えることから、対応を誤ると不満を抱いた社員より訴えられるケースもあります。トラブルを防ぐためにも、社員や労働組合が納得できるよう意見交換を行いながら、慎重に対応する必要があるでしょう。

【参考】
『労働契約の終了に関するルール』/厚生労働省

2021.08.19

[執筆者]
加藤知美
エスプリーメ社労士事務所 社会保険労務士
愛知県社会保険労務士会所属。総合商社、会計事務所、社労士事務所の勤務経験を経て、2014年に個人事務所を設立。総合商社時では秘書・経理・総務が一体化した管理部署で指揮を執り、人事部と連携した数々の社員面接にも同席。会計事務所、社労士事務所勤務では顧問先の労務管理に加えセミナー講師としても活動。現在は文章能力を活かしたオリジナルの就業規則・広報誌作成事業の2本柱を掲げ、専門知識を分かりやすく伝えることをモットーに企業の支援に取り組んでいる。

※当記事は「経営ノウハウの泉」の提供記事です
keieiknowhow_logo200.jpg

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

米雇用なお堅調、景気過熱していないとの確信増す可能

ビジネス

債券・株式に資金流入、暗号資産は6億ドル流出=Bo

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇用者数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中