中国の不動産バブルは弾けるか? 恒大集団の破綻が経済戦略の転換点に
Too Big to Fail?
そして今、投資家がまたもや固唾をのんで見守っているのは、中国第2位の不動産開発大手・恒大集団の運命だ。デフォルト寸前に陥った恒大は「世界で最も多くの借金を抱えた不動産開発会社」として知られる。
好況時にはよくあることだが、恒大も中国の不動産バブルに乗じてじゃんじゃん社債を発行し急成長を遂げた。だが中国の不動産市場の長期的な減速にパンデミックの発生が追い打ちをかけ、その壮大な空中楼閣はみるみるうちに崩れ始めた。
資金調達が困難になると、納入業者への支払いが滞り、恒大はデフォルトの危機に追い込まれた。中国当局は破綻回避のため、電気自動車(EV)など副業のベンチャーを含む資産を売却するよう経営陣に命じた。さらに当局は救済こそしないものの、恒大が銀行などの債権者と利払いと元本の支払期限で再交渉を行うことを認めた。
残念ながら、資産のバーゲンセールも債務条件の再交渉も恒大にとっては一時しのぎにすぎないようだ。理由の1つは、昨年度の決算報告によると、1年以内に返済期限を迎える債務が520億ドル超に上ること。2つ目は、今のところ資産のたたき売りの成果もパッとしないことだ。
EV事業など「目玉商品」はまだ売れていない。潜在的な買い手はデフォルトになって価格が二束三文になるのを待っているというのが大方の見方だ。この状況で、格付け会社のムーディーズとフィッチ・レーティングスは恒大の社債の格付けを落とした。
投資家やアナリストは、恒大が救済を正当化できるほど経済的に重要な企業かどうかを検討している。もっとも投資家の心理は基本的に、政府の介入に対して悲観的だ。
恒大の苦境は、事業の性質や負債の規模など多くの理由で華融とは異なり、「大き過ぎてつぶせない」というわけでもなさそうだ。
特に注視すべき点は、中国政府が今年の経済政策の主要な課題として、デレバレッジ(過剰債務削減)とリスク回避を掲げていることだ。歴史的に見て、中国の企業は比較的簡単に融資を受けることができ、非金融企業の負債は持続不可能なペースで膨らんできた。
2015年以降、政府は対象を絞ってデレバレッジ戦略を行ってきたが、新型コロナのパンデミックに際し、こうした取り組みは足踏み状態になった。その後、感染拡大が比較的落ち着いて、特に20年は信用取引の拡大が顕著だったことから、デレバレッジ戦略が再び強化されつつある。