最新記事

中国経済

中国の不動産バブルは弾けるか? 恒大集団の破綻が経済戦略の転換点に

Too Big to Fail?

2021年9月27日(月)19時35分
ネーサン・ハンドワーカー(中国専門調査機関「チャイナ・ガイズ」共同創設者)
江蘇省啓東で恒大が手掛ける大規模開発

江蘇省啓東で恒大が手掛ける大規模開発。自転車操業を危惧されていた QILAI SHEN-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

<習政権は脱レバレッジとリスク低減に舵を切った。不動産大手・恒大集団が破綻すれば、救済に値しない企業の「債務爆弾」を爆発させるという新方針の象徴的事例となる>

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は中国経済に未曽有の打撃を与えた。そして経済を立て直すには、これまた未曽有の債務リスクに対処する覚悟が求められる。

昨年後半以降、中国では地方政府の資金調達事業体から不動産開発会社、国有企業まで、デフォルト(債務不履行)が相次ぎ、債券市場は大荒れに荒れた。今年半ばまでに25の事業体・企業が破綻し、過去最大の約100億ドル規模のデフォルトが生じた。

一連のデフォルトの背景には、中国共産党の路線転換がありそうだ。中国ではこれまで国有企業と国家の経済戦略上重要な民間企業には、ある程度のモラルハザードが許容されてきた。借金頼みの高リスク投資も心配無用。金策に困れば政府が助けてくれる、というわけだ。

国内外の富裕層はこれを暗黙のルールとして投資を行ってきた。おかげで、この1年ほどの間に債券投資家は3度も肝をつぶすことになった。いずれも国有企業である石炭大手の永煤集団、自動車大手の華晨汽車集団、半導体大手の紫光集団の3社が経営難に陥っても中国当局は知らん顔で、デフォルトを防ごうとしなかったからだ。

これではっきりした。中国政府にはもはや「債務爆弾」の爆発を防ぐ気はない。よほど重要な企業でない限り、救いの手を差し伸べないだろう。

では、救済に値するほど重要な企業とは? 今年下半期に入ってからこれまでに、投資家にはそれを見極めるチャンスが与えられたはずだ。

いい例が、中国の4大国有金融資産管理会社のうちの1社、不良債権の処理を専門とする華融資産管理(華融)だ。今年4月、その華融が年次決算報告を延期し、債券市場に不安が広がった。

政府も借金苦にあえぐ

5カ月後にようやく決算が発表されると、パンデミックの間、利益が前年比で90%減少したことが明らかになった。つまり、華融はデフォルト寸前だったのだ。中国政府はリーマン・ショック級の難問を抱えていたことになる。

華融は従来の金融部門において不良債権の片付け役を務めていた。その華融が破綻すれば経済全体に激震が走る。そこで77億ドルの救済策がまとまり、複合企業の中信集団などの国有企業が華融に資本を注入することになった。昨年に中国でデフォルトの波が起きてから、「大き過ぎてつぶせない」ために救済対象になった事例はこれが初めてだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

-日産、11日の取締役会で内田社長の退任案を協議=

ビジネス

デフレ判断指標プラス「明るい兆し」、金融政策日銀に

ビジネス

FRB、夏まで忍耐必要も 米経済に不透明感=アトラ

ワールド

トルコ、ウクライナで平和維持活動なら貢献可能=国防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中