仮想通貨が利子収入を生む「レンディング」、年利6%でも得と言い切れない訳
このほかCeFiのレンディングサービスは、伝統的な金融機関と関係が近いことから、DeFiよりUI・UXがユーザーフレンドリーであるところが特徴です。また、法定通貨での円滑な支払いや安定した金利の支払い、そして顧客サポートの充実などがCeFiの特徴としてあげられます。
以下が、一般的なCeFiのビジネスモデルです。
1. CeFiプラットフォームAが預金者に預金の対価として5%の年利を支払うと宣伝する。
2. ユーザーXがAに1BTCを預ける。
3. CeFiプラットフォームAがトレード企業Bに対して1BTCを8%の年利で貸す。
4. CeFiプラットフォームAがユーザーXに対して5%の金利を支払って3%のスプレッド(金利差)を得る。
CeFiのビジネスモデル
このほか、トレーディングや財務のマネジメントを根拠に金利の支払いをする企業もあります。
ユーザー、トレード企業、そしてプラットフォームの三者はウィンウィンウィンの関係にあるように見えるかもしれません。しかし、ユーザーである預金者は、受け取る金利を額面通り捉えるのは危険かもしれません。利用するCeFiプラットフォーム特有のリスクや通貨リスクを考慮に入れた上で、利子率の高低を判断する必要がありそうです。
通貨リスク
まず、仮想通貨自体に内在するリスク「通貨リスク(Currency Risk)」について考えてみましょう。今回はイーサリアムのケースを取り上げます。
イーサリアムの年間発行額は1800万ETHで、2021年6月時点では約1億1600万ETHが市場に流通しています。市場の流通量は年々増える一方で年間発行額は変わりませんから、イーサリアムの希釈率(dilution rate)は減少します。2021年6月時点では、年間で3.77%流通量の増加があるため希釈率は3.77%ということができます。
クラーケンの研究チーム「クラーケン・インテリジェンス」は、イーサリアムの場合は、この希釈率がハードルレート(投資を行ううえで、最低限確保すべき利回り)に相当すると考えています。
イーサリアムでは、毎年の新規発行によってインフレが生じ、ETHの購買力が低下するため、これを補うためには、上記の希釈率を上回る利回りの確保が必要となります。CeFiが提供する額面通りの利子率が投資を行ううえで合理的な水準かどうか判断するには、この通貨リスクに加えて、次に説明するプラットフォームのリスクも考慮に入れなければなりません。
プラットフォームリスク
プラットフォームリスクとして、ここでは「デフォルト・リスク」、「カストディアン・リスク」及び「信用・透明性リスク」の3つに分けて考察します。
デフォルト・リスク
デフォルト・リスクは、資金の借り手が返済できなくなるリスクを指します。一般的にCeFi側は借り手が担保に出す資金の5割ほどしか借り入れを認めていません。CeFi側は、担保が一定水準を下回ったり借り手が積み増しに失敗したりするときに、担保を売ります。
問題は、市場が暴落する時です。暴落によって複数の投資家が担保となっていた資産を一斉に引き上げることになり、その時、CeFi側が資金の預け手に対して利子の支払いができなくなる可能性が出てきます。最悪の場合は、デフォルトにつながり、投資家はCeFiに預けていた資金を全て失うことになります。