最新記事

仮想通貨

デジタル人民元が「ビットコインを潰す」は誤解...むしろ仮想通貨を救う可能性も

2021年5月26日(水)19時50分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)
デジタル米ドル(イメージイラスト)

sakhorn38-iStock

<デジタル人民元などの「国家による仮想通貨」が出回れば、ビットコインは終わる...とはならない理由を解説>

デジタルドルやデジタル円など世界各国で中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)の開発競争が急ピッチで進んでいます。国際決済銀行(BIS)の調査によりますと、現在、世界の65の中央銀行のうち58の中央銀行が積極的にCBDCの調査・開発を行っています。

とりわけ、中国人民銀行によるデジタル人民元の開発スピードは速く、つい最近も中国工商銀行(ICBC)が同銀行のアプリ内でデジタル人民元のウォレットを有効化できるようにしたと報じられました。

世界的なCBDCの導入が間近に迫る中、私のもとにも「CBDCが使えるようになるとビットコインなど仮想通貨は不要になるのではないか」という質問が寄せられています。大手経済メディアでも「ビットコインの将来性には疑問符だが、CBDCには可能性がある」といった論調をよく目にします。

しかし、「CBDCと仮想通貨が直接の競合になる」という考え方は誤りであり、CBDCは仮想通貨の代替になれないと考えています。今回は、その理由を解説します。

CBDCに期待される役割

CBDCは、大きく分けてリテール(Retail)型とホールセール(Wholesale)型があります。リテール型は、米ドルや円など法定通貨のデジタル版であり、支払い手段として個人や企業に使われることを想定しています。

一方、ホールセール型は、中央銀行に準備金を置く金融機関など限られたグループを対象にしており、証券やデリバティブ(金融派生商品)の取引などで送金者と受金者の価値移転の効率化を目指しています。

以下の図は、世界のCBDC開発状況を示したものです。

210525_kra02.gif

(出典:Kraken Intelligence「各国のCBDC開発状況」)

各国の事情によってCBDCに期待することは様々でしょうが、大きく分けて少なくとも3つあると考えられます。

新たな支払い手段
現金を減らしてデジタル版のマネーによる支払いを推進することになるでしょう。ほぼ瞬時に決済が低コストで可能な支払いシステムの構築に寄与することが期待されています。

金融・財政政策のツール
景気刺激策の効果を個人に直接的にもたらす金融政策のツールとして活用できると考えられています。CBDCは、理論的には電子ウォレットという形で誰にでも直接支援金を支払いすることができます。

また、生活困窮者など特定のグループに対象を絞った支援金の給付も可能です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、東部2都市でウクライナ軍包囲と主張 降伏呼

ビジネス

「ウゴービ」のノボノルディスク、通期予想を再び下方

ビジネス

英サービスPMI、10月改定値は52.3 インフレ

ビジネス

ドイツの鉱工業受注、9月は前月比+1.1% 予想以
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中