最新記事

サプライチェーン

アメリカのワクチン接種普及の影に「資材囲い込み」 他国メーカー困惑

2021年5月13日(木)10時33分

国際機関や各国政府、製薬会社などで構成される官民組織「Gaviワクチンアライアンス」は、ワクチンに対するグローバルなアクセスの拡大に向けたバイデン政権の動きを称賛している。特に評価しているのは、Gaviが世界保健機関(WHO)と共に主導している国際的なワクチン調達コンソーシアム「COVAX」を支援するため米国が40億ドル(約4350億円)の拠出を表明した点だ。

しかし、DPAに関する質問に対して、Gaviは次のように回答した。「ワクチンに対する公平なアクセスというCOVAXの目標を阻む最大の障害は、グローバルな供給が制約されていることだ。これについては、(ワクチン)原材料に関する輸出規制による部分がかなり大きく、結局のところ、パンデミックの長期化につながるだけだ」

匿名を条件に取材に応じたバイデン政権高官は、輸出規制はまったく行われておらず、米国のサプライヤーは国内のワクチン製造企業に優先的に供給した上で製品の海外出荷を続けている、と語った。この高官は、グローバルなワクチン原材料不足の原因はDPAではなく、圧倒的に需要が大きいためだと話している。

インドの懇願

ワクチンの原材料は、英国や中国を含め世界各国で生産されている。だが、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィックやダナハーの生命科学部門サイティバ、ポールといった代表的なサプライヤーは米国を拠点にしている。ロイターでは、ワクチン原材料や製造設備の生産に占める米国のシェアを厳密に特定することができなかった。

DPAは米国が大規模なワクチン製造体制を構築することに貢献し、米国民は安心してワクチンにアクセスできるようになり、米国の製薬会社の収益増大をもたらしている。

米国の総人口のうち約45%が、新型コロナワクチンの接種を少なくとも1回受けている。だが英オックスフォード大学が収集したデータによれば、南アフリカからグアテマラ、タイに至るまで、総人口に占めるワクチン接種済み比率が約1%、あるいはそれ以下の国は数十カ国に及ぶ。

DPAは、ワクチン製造量で世界首位のセラム・インスティチュート(インド)など、世界各国のワクチン製造企業から批判を浴びている。

セラムのアダール・プーナワラ最高経営責任者(CEO)は4月、ツイッターへの投稿で米国に対し、「我々が新型コロナに打ち勝つために本当に団結するのであれば」、米国は原材料の独占を解除するべきだと「米国外のワクチン産業を代表して」訴えた。

セラムでは、今月から米ノババックスが開発したワクチンを年間10億回分製造する予定だった。だが、同社の計画に詳しい情報提供者は、米国からの原材料供給がければ、製造量は半分以下になりそうだと語った。

セラムは原材料不足の問題についてロイターの取材に応じなかったが、困窮しているワクチン製造企業は同社だけではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

規制・制度など「障害」の情報提供を、AI活用推進で

ワールド

トランプ氏、カナダとの新規橋梁巡り開通阻止を警告 

ワールド

米軍、東部太平洋で船舶攻撃 2人死亡

ワールド

シンガポール、今年の成長見通し上方修正 堅調な世界
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 4
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 7
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 8
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 9
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 10
    【銘柄】なぜ?「サイゼリヤ」の株価が上場来高値...…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 5
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中