最新記事

仮想通貨

ビットコインはインフレヘッジ手段として賢明だが、不安はある

A HEDGING TOOL

2021年4月8日(木)17時35分
スコット・リーブス
アダム・スミス

アダム・スミスは貨幣価値と意思の関係に言及した MONDADORI PORTFOLIO/GETTY IMAGES

<供給量が限られているため物価上昇時の損失回避に役立つが、結局は将来の値上がりを夢見ているだけではないか。もしもハッカーが別の仮想通貨を作ったら?>

ビットコインは米ドルのような政府発行の不換紙幣と異なり、供給量が限られている。そのためインフレに対するヘッジ、つまり損失回避の有効な手段になると思われている。

一般に限られた供給と旺盛な需要は価格を上昇させる。その点、ビットコインが流通するデジタル空間には、供給量を増やして価値を低下させるFRB(米連邦準備理事会)のような中央銀行は存在しない。

米政府がドルと金の交換を停止して金本位制を崩壊させたのは1971年。それ以降、事実上ドルの価値を支えるものは基軸通貨への「信仰心」だけになったという見方もある。

1975年から新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が本格化する2020年3月までに、アメリカのマネーサプライ(通貨供給量)は約2734億ドルから約4兆ドルに増加した。

その後はコロナ対策で大型景気刺激策が実施されたこともあり、2020年11月には約6.5兆ドルまで膨れ上がった。さらにジョー・バイデン大統領は3月、1.9兆ドルの新たな景気刺激策を成立させた。

一部には、限られた商品やサービスを買うためのドルが増えれば、インフレを招くという懸念もある。そうなれば、少額の預金保有者や年金生活者は打撃を受ける。銀行預金は高金利の商品でも0.5%以下のものが多く、年金などの物価調整金の伸びは一般的に控えめだ。

一方、ウイルスの感染拡大を抑えるためのロックダウン(都市封鎖)でGDPが縮小したにもかかわらず、不動産市場の一部は好調だ。

この時期に失業を免れた人々、特に自宅のパソコンでリモートワークができる高学歴層は大都市から郊外や地方に引っ越した。その結果、一部の郊外では不動産価格が上昇している。

1974年にノーベル経済学賞を受賞したフリードリヒ・ハイエクは、金融機関が喜んで受け入れ可能な民間通貨の創設を提唱し、価値の安定こそが受け入れられるための重要な条件だと主張した(ハイエクは92年に死去。ビットコイン誕生は2009年のことだ)。

ビットコインのような仮想通貨は、ハイエクが思い描いていたものの一部なのか。この点については議論が続いているが、ビットコインの発行総量は2100万枚に制限されているため、供給量の増加によって価値が損なわれることはない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国のデジタル人民元、26年から利子付きに 国営放

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、11月は3.3%上昇 約3年

ワールド

ロ、ウ軍のプーチン氏公邸攻撃試みを非難 ゼレンスキ

ワールド

ウクライナ「和平望むならドンバス撤収必要」=ロシア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中