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元マイクロソフト役員が作った会社は「エクセル作業、原則禁止」 週休3日で年収3倍にした秘訣とは

2021年4月1日(木)19時20分
越川慎司(株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスターCaster Anywhere事業責任者) *PRESIDENT Onlineからの転載

7割の契約は、提案書や見積書以前に決まっている

もちろん、ビジネスをしていく上では、売上げや利益に直結しない作業もしなくてはいけません。作業報告書を作ったり、顧客やクライアントとの定例会議の時間をとったりすることは、必ずしもそれによって売上げが上がることではありません。

しかし、こうしたことにより得られる信頼や信用が、売上げや利益を上げていくたに不可欠であることは言うまでもないでしょう。

特に追加契約や大型受注はこういった見えない信用や信頼をベースとすることが多く、ここを疎かにすることは会社の総売上げ(トップライン)を落とすことにつながってしまいます。

ここで問題になるのは、信頼や信用の獲得といった定性的な成果は、可視化したり計測したりすることが難しいということです。ただ、追加契約や大型契約の経緯を振り返ると、何がクライアントに刺さって契約締結に至ったかを分析することができます。顧客は、価格や投資対効果といった計測可能な定量的な評価のみで購買を決めるわけではありません。人間ですから何かしら感情的な判断が加わります。むしろ、論理的な判断よりも、安心感やワクワク感といった感情的な評価(期待)がビジネス関係を維持することにつながります。

ではどういったことが、この感情をベースとした契約につながっていくのか。私はクライアント企業18社と共に分析をしました。

これら18社は、製造業や流通業、そして情報通信サービス業などでBtoBビジネスを手掛ける大手企業です。分析対象としたのは、3年以上契約が続き、毎年契約金額が上がっていった案件です。

分析対象となった43件を見ていくと、その7割は提案書や見積書を出す前に契約がほぼ決まっていたことがわかりました。このことから顧客は、他社との価格比較や投資対効果といった定量的判断だけにフォーカスしているわけではないことがわかります。

継続案件に共通する「軽微なトラブル」の存在

調査をしてみて意外だったのは、こういった継続案件の初年度にいくつかのトラブルが起きていたことです。このトラブルは致命的ではなかったからこそ、その後の継続契約につながっていることもポイントです。それらは、そもそも軽微なトラブルだったか、もしくはトラブルが致命的になる前に解決したか、のどちらかでした。詳細について追加ヒアリングをすると、初年度に起きたトラブルを逃げずに真摯に対応して被害を最小限に抑えただけでなく、提示した再発防止策をしっかりと実行し二度と同じトラブルを起こさなかったことが、結果的に信頼につながっていたこともわかりました。

もちろん、トラブルは起きないほうがよいのですが、顧客にとっては判断のいい機会にもなるということです。何か問題が発生したとき、営業担当が「自分のせいではない」と言って逃げてしまったか、それとも逃げずに親身に対応してくれたかを、顧客はじっくりと見ているわけです。

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