最新記事

仮想通貨

ビットコインが定着するか崩壊するか、運命が決まる時は間もなく来る

TOO BIG TO FAIL?

2021年4月14日(水)18時56分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

210413P18paris_BCN_02cutout.jpg

独自の仮想通貨を発行したパリス・ヒルトン NATHAN CONGLETONーNBCーNBCU PHOTO BANK/GETTY IMAGES


そうしたなかで、ここにきて電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスクCEO、世界最大規模の資産運用会社ブラックロック、金融大手のゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーがビットコインの取引や投資を進める計画を明らかにした。クレジットカード大手のビザとマスターカードも、決済ネットワークに仮想通貨を加える方針だ。

その半面、慎重な見方をする専門家も少なくない。ウォーレン・バフェット率いる投資会社バークシャー・ハサウェイのチャーリー・マンガー副会長やジャネット・イエレン米財務長官は、ビットコインの暴落が金融システムに及ぼす悪影響に警鐘を鳴らす。相場が暴落すれば、バブルに踊った一般投資家たちが一瞬で莫大な資産を失いかねない。

懸念はほかにもある。各国当局のコントロールが及ばない仮想通貨が存在感を増せば、世界の金融秩序が混乱したり、金融政策によって経済を活性化させることが今までよりはるかに難しくなったりしかねない。

仮想通貨の普及は、金融の未来に大きな影響を及ぼす可能性があるのだ。そこでアメリカの規制当局は仮想通貨を販売する企業に対して厳格な情報開示義務を課すことを提案し、中国政府は独自のデジタル通貨の大規模実証実験を開始している。インド政府は仮想通貨の保有を刑事罰の対象にする方針だと報じられている。

今さら冷や水を浴びせようとしても手遅れだと、ノボグラッツなどの推進派は主張する。「これまで仮想通貨の相場を押し上げてきたのは主に若い世代だが」と、ノボグラッツは言う。「これからは世界の富がもっと本格的に流れ込んでくる」

ビットコインは「金融の主流に定着するか、投機バブルがはじけるか」の岐路にあると、金融大手シティグループがまとめたリポートは指摘している。「今後しばらくの展開がビットコインの運命を決する可能性が高い」。つまり2021年は、ビットコインの13年の歴史で最も重要な1年になりそうだ。

インフレ懸念が追い風に

素性不明のコンピューターエンジニア、サトシ・ナカモトがビットコインのコードを初めて発表したのは09年1月9日のこと。このデジタル通貨は、まさに現在のような経済状況を予見して生み出されたと言っても過言ではない。

当時、世界の国々は08年の金融危機を受けて、今日と同じように大々的な経済対策を実行していた。市場に大量の資金を供給し、金利を押し下げ、莫大な予算を拠出した。ナカモトの新しいデジタル通貨は、こうした政策の先に待っている(と多くの人が予想する)インフレから個人の資産を守る手段として設計されたものだった。特定の政府や経済、通貨に左右されずに、安全に資産を保管できる場をつくろうとしたのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

政府、25・26年度の成長率見通し上方修正 政策効

ビジネス

フジHD、株式買い増しはTOBでと旧村上系から通知

ワールド

北京市、住宅購入規制さらに緩和 需要喚起へ

ビジネス

26年度の超長期国債17年ぶり水準に減額、10年債
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中