最新記事

日本経済

中国人富裕層が感じる「日本の観光業」への本音 コロナ禍の今、彼らは何を思うのか

2021年3月6日(土)12時17分
劉 瀟瀟(三菱総合研究所研究員) *東洋経済オンラインからの転載

それでは日本の政府、ないしは観光業はどうすればいいのか。まず考えられるのは、ワクチン接種が確認できるデジタルパスポートの検討だ。ワクチンを接種した人しか来日できないようにし、飲食店や店舗に入る際も提示を義務付けるなど、接客側と観光業者側双方に安心できる仕組みを検討するのは必須だと言える。ただ、より有効に機能させるためには、日本人にも同じような仕組みが必要だろう。

また、まだ日本に来られない富裕層や影響力が強いブロガーを取り込む策としては、「オンライン×オフライン」のサービスを検討する必要もあるだろう。コロナ禍ではリモート観光に取り組む事例も増えているが、例えば、観光コンシェルジュが中国人富裕層に日本の高級リゾートを案内しながら、体験してほしい商品も郵送するといった方法も考えられる。

子どもの短期留学をオンラインにして日本語や伝統文化が体験できるプライベートクラスを開催するのも1つの手だ。またM&Aなど富裕層の関心が高い案件(介護施設・健康関連への関心が高い)を紹介し、現地のオンライン訪問や、コーディネートをフォローするといったことも考えられそうだ。

日本への旅行のニーズはまだまだ高い

日本の観光業者は、ポストコロナの訪日中国人富裕層へのアプローチを研究する際、上述の具体的な内容はもちろん、訪日中国人富裕層のニーズが変化しているというトレンドも忘れてはいけない。

以前、インバウンドで注目された商品など「モノ」の購入、そしてアクティビティーなどの「コト体験」は、今後海外旅行のニーズとしてますます顕著になるとみられる。

中国国内のデータ調査結果や今まで筆者が実施した富裕層へのインタビューからも、有名なレストランで食べて高いホテルに泊まるというニーズから、日本で食事・宿泊・観光することを通して文化・マナーの勉強をしたいというニーズへパラダイム・シフトが起きていることが見えてきている。

中国人観光客へのアプローチとして、スペインは、中国の海外旅行専門調査機関のビッグデータ分析サービス等を活用し、「地方」「自然」「小旅行」への対応を検討しているようだ。中国人の日本旅行へのニーズが高い今だからこそ、日本の観光業はコロナからの回復を待つだけではなく、富裕層のニーズ変化をとらえ、行動を起こす必要があるだろう。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、アイオワ州訪問 建国250周年式典開始

ビジネス

米ステーブルコイン、世界決済システムを不安定化させ

ビジネス

オリックス、米ヒルコトレーディングを子会社化 約1

ビジネス

米テスラ、6月ドイツ販売台数は6カ月連続減少
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 6
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中