最新記事

2021年に始める 投資超入門

そしてアメリカ経済の「回復」が始まる

LOOKING PAST TRUMP, LOOKING PAST THE VIRUS

2021年1月9日(土)12時15分
ダニエル・グロス(ビジネスライター)

2020年11月、米ニューヨークのタイムズスクエアはバイデンの大統領選勝利のニュースに沸いた MICHAEL NAGLE-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

<どんな経済支援策よりもワクチン、貿易摩擦削減と脱炭素への取り組み。議事堂襲撃事件の衝撃が走るアメリカだが、「トランプ」と「新型コロナウイルス」という、2つの現象の先に見える経済と株式市場の展開を読む>

(※1月5日発売の本誌「2021年に始める 投資超入門」特集より。編集部注:一部の情報は2020年12月末時点のものです)

2021年のアメリカ経済と株式市場では、2つのドラマが複雑に絡み合って展開される。トランプ以後と、新型コロナウイルス以後の物語だ。

言うまでもないが、トランプ時代は1月20日に終わる。たとえ彼が敗北を認めなくても、その日が来れば新しい大統領が宣誓をし、ホワイトハウスの主となる。

ジョー・バイデンは直ちに、前任者より合理的かつ前向きな経済政策を採るだろう。景気刺激策、失業者や資金の乏しい自治体への支援、貿易関係の改善、そして再生可能エネルギーなどへの積極的な投資も打ち出すはずだ。
20210112issue_cover200.jpg
ただし、新型コロナウイルスのほうはまだ終わりが見えない。2度目の冬が来ても、残念ながらアメリカでは危険な感染拡大が続いている。それでも米国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長によれば、4月になれば「基礎疾患のない健康な若い男女も、大手のドラッグストアでワクチン接種を受けられるように」なるという。

この1年、アメリカでは経済も市場も波瀾万丈、想定外の苦難に見舞われたが、その後は回復基調を維持している。新しい1年についても、大方の専門家は明るい見通しを示している。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙の調査に答えたエコノミストたちは、2020年に2.7%のマイナス成長(2009年の金融危機以来の落ち込み)だった米経済が2021年は3.7%のプラスに転じると見込む。ゴールドマン・サックスも、主要株価指数のS&P500種が年末までに21%上昇すると見込んでいる。

それでも先行きは不透明だ。新政権誕生までの空白期間にも、新型コロナウイルスによる公衆衛生の危機と経済の悪化は無慈悲に進行することだろう。

もちろん一方では、経済にも株式市場にも追い風となりそうな動きがいくつも期待できる。それに新型コロナに関しては、もはや「危機が終わるかどうか」ではなく、「いつ終わってどのように景気が回復に向かうか」の問題になっている。

ジェローム・パウエル議長率いるFRB(米連邦準備理事会)は、米経済と国際資本市場の両方を支えるために必要なことは何でもすると確約している。超低金利を維持し、公開市場での資産購入や融資の拡大策も続ける構えだ。

パウエルは2020年12月1日に議会で、FRBは今後も「あらゆる手段を動員して」景気を支えると表明した。今の超低金利が続くなら、財政難の自治体や資金繰りの苦しい企業や消費者は債務の借り換えや新規の借り入れをしやすい。つまり、2021年もFRBは金融政策でアメリカ経済を支えてくれるということだ。

FRBのおかげもあって、コロナの危機が続いている今もマクロ経済の状況は改善しつつある。2020年春には約2000万の雇用が失われたが、11月までに1000万弱の雇用が回復された。4月には14.7%まで悪化した失業率も、11月には6.7%にまで改善していた。

transaction_accounts_superbanner.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米失業保険継続受給件数、10月18日週に8月以来の

ワールド

中国過剰生産、解決策なければEU市場を保護=独財務

ビジネス

MSとエヌビディアが戦略提携、アンソロピックに大規

ビジネス

英中銀ピル氏、QEの国債保有「非常に低い水準」まで
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中