最新記事

日本的経営

コロナ危機を乗り切れる? 日本企業の成長を妨げる「7大問題」とは

SEVEN CHALLENGES FOR JAPANESE FIRMS

2020年7月22日(水)18時07分
加谷珪一(本誌コラムニスト、経済評論家)

metamorworks/ISTOCK

<日本企業が何年も放置してきた課題がコロナ禍で顕在化──今こそ生産性向上と復活を果たすべきときだ。本誌「コロナで変わる 日本的経営」特集より>

※日本的経営の7つの課題を指摘する加谷珪一氏によるコラムを2回に分けて掲載します。

【後半はこちら】日本的経営の「永遠の課題」を克服すれば、経済復活への道が開ける

新型コロナウイルス危機は、いわゆる日本的経営が抱える問題点を浮き彫りにした。バブル崩壊以降、30年にわたって世界で日本だけが成長から取り残されてしまったが、最大の理由は、安価な工業製品を大量生産する昭和型モデルから脱却できず、ビジネスのIT化やオープン化といったパラダイムシフトに対応できなかったことにある。

ペストやスペイン風邪の歴史からも分かるように、感染症の流行は変化のスピードを加速させる作用を持っており、コロナ危機によって、10年かかると思われていた変化が3~4年で実現する可能性も指摘されている。このタイミングで日本が変われなければ、諸外国との格差は致命的なものとなるだろう。

20200728issue_cover200.jpg

日本の労働生産性は先進諸外国の中では常に最下位だったが、特にその差が顕著になったのは90年代以降のことである。この時代は全世界的に産業のIT化が本格化するとともに、中国をはじめとする新興国への製造業シフトが一気に進んだ。ところが日本は一連の変化にうまく対応できず、諸外国との格差を広げてしまった。

コロナ危機をきっかけに、日本の企業社会には変化が求められているが、一斉出社や長時間残業、ハンコに代表されるIT化の遅れ、過当競争など、議論されているテーマのほとんどは、変化の必要性が叫ばれていたものばかりである。以下では日本企業が乗り越えるべき課題について主に7つの観点から議論していく。

1. 需要変化への対応

新型コロナウイルスをきっかけとした「新しい生活」によって消費者の行動変化が予想されており、多くの業界においてビジネスモデルの転換が必須となっている。外食産業では店内のレイアウトを変更したり、店舗網を縮小するといった動きが活発になっているが、一連の変化は基本的に売上高の減少を伴う。最終的に高付加価値モデルにシフトできなければ、新しい時代を生き抜くことはできないだろう。

日本の外食産業は市場規模に対して店舗が過剰となっており、過当競争に陥っていると指摘されてきた。日本人の実質賃金が下がっていることから、値下げ競争が常態化しており、これが企業の低収益と従業員の過重労働の原因となっている。外食産業に限らず、過当競争からの脱却は時代の必然であり、コロナはきっかけにすぎないと解釈すべきだ。

2. デジタルシフト

需要変化の多くはデジタルシフトを伴う。外食産業は店舗網の縮小と同時にデリバリーシフトが進んでいるが、この動きはコロナ前から顕著であった。アメリカでは数年前から外食のデリバリー化が進み、レストランの廃業が相次いだが、背景となっているのは業務のIT化である。

スマートフォンが普及したことで業務のIT化とパーソナル化が加速。皆で連れ立ってランチやディナーに行く回数が減ったことがデリバリーの利用を後押しした。つまり、デリバリーシフトは構造的なものであり、コロナ危機が終息すれば元に戻るという話ではないのだ。

日本企業におけるハンコ文化が無意味であることは、以前から指摘されてきたが、テレワークの拡大によってようやくその弊害の大きさが認知されるようになった。先進諸外国と比較して日本企業のIT化が遅れているのは事実であり、コロナはこれを変えるきっかけとなるだろう。

【関連記事】知られざる日本のコロナ対策「成功」要因──介護施設
【関連記事】【IT企業幹部・厚切りジェイソン】アメリカの営業マンが外回りせずに2億円稼ぐ理由

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

習氏、台湾問題は米中関係で「最重要」 トランプ氏と

ワールド

米イラン協議、6日にオマーンで開催 核問題中心に討

ワールド

米政権、ミネソタ州派遣の移民職員700人削減へ=国

ビジネス

米財務省が1250億ドルの借り換え発表、入札規模は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流していた? 首相の辞任にも関与していた可能性も
  • 4
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 7
    電気代が下がらない本当の理由――「窓と給湯器」で家…
  • 8
    戦争の瀬戸際の米国とイラン、トランプがまだ引き金…
  • 9
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 10
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中