コロナ危機を乗り切れる? 日本企業の成長を妨げる「7大問題」とは
SEVEN CHALLENGES FOR JAPANESE FIRMS
metamorworks/ISTOCK
<日本企業が何年も放置してきた課題がコロナ禍で顕在化──今こそ生産性向上と復活を果たすべきときだ。本誌「コロナで変わる 日本的経営」特集より>
※日本的経営の7つの課題を指摘する加谷珪一氏によるコラムを2回に分けて掲載します。
【後半はこちら】日本的経営の「永遠の課題」を克服すれば、経済復活への道が開ける
新型コロナウイルス危機は、いわゆる日本的経営が抱える問題点を浮き彫りにした。バブル崩壊以降、30年にわたって世界で日本だけが成長から取り残されてしまったが、最大の理由は、安価な工業製品を大量生産する昭和型モデルから脱却できず、ビジネスのIT化やオープン化といったパラダイムシフトに対応できなかったことにある。
ペストやスペイン風邪の歴史からも分かるように、感染症の流行は変化のスピードを加速させる作用を持っており、コロナ危機によって、10年かかると思われていた変化が3~4年で実現する可能性も指摘されている。このタイミングで日本が変われなければ、諸外国との格差は致命的なものとなるだろう。
日本の労働生産性は先進諸外国の中では常に最下位だったが、特にその差が顕著になったのは90年代以降のことである。この時代は全世界的に産業のIT化が本格化するとともに、中国をはじめとする新興国への製造業シフトが一気に進んだ。ところが日本は一連の変化にうまく対応できず、諸外国との格差を広げてしまった。
コロナ危機をきっかけに、日本の企業社会には変化が求められているが、一斉出社や長時間残業、ハンコに代表されるIT化の遅れ、過当競争など、議論されているテーマのほとんどは、変化の必要性が叫ばれていたものばかりである。以下では日本企業が乗り越えるべき課題について主に7つの観点から議論していく。
1. 需要変化への対応
新型コロナウイルスをきっかけとした「新しい生活」によって消費者の行動変化が予想されており、多くの業界においてビジネスモデルの転換が必須となっている。外食産業では店内のレイアウトを変更したり、店舗網を縮小するといった動きが活発になっているが、一連の変化は基本的に売上高の減少を伴う。最終的に高付加価値モデルにシフトできなければ、新しい時代を生き抜くことはできないだろう。
日本の外食産業は市場規模に対して店舗が過剰となっており、過当競争に陥っていると指摘されてきた。日本人の実質賃金が下がっていることから、値下げ競争が常態化しており、これが企業の低収益と従業員の過重労働の原因となっている。外食産業に限らず、過当競争からの脱却は時代の必然であり、コロナはきっかけにすぎないと解釈すべきだ。
2. デジタルシフト
需要変化の多くはデジタルシフトを伴う。外食産業は店舗網の縮小と同時にデリバリーシフトが進んでいるが、この動きはコロナ前から顕著であった。アメリカでは数年前から外食のデリバリー化が進み、レストランの廃業が相次いだが、背景となっているのは業務のIT化である。
スマートフォンが普及したことで業務のIT化とパーソナル化が加速。皆で連れ立ってランチやディナーに行く回数が減ったことがデリバリーの利用を後押しした。つまり、デリバリーシフトは構造的なものであり、コロナ危機が終息すれば元に戻るという話ではないのだ。
日本企業におけるハンコ文化が無意味であることは、以前から指摘されてきたが、テレワークの拡大によってようやくその弊害の大きさが認知されるようになった。先進諸外国と比較して日本企業のIT化が遅れているのは事実であり、コロナはこれを変えるきっかけとなるだろう。
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