最新記事

ポストコロナを生き抜く 日本への提言

コロナ後に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」再来の希望

JAPAN AS NUMBER ONE, AGAIN?

2020年5月8日(金)17時20分
にしゃんた(羽衣国際大学教授、タレント)

コロナ封鎖が解除され、操業が再開されているホンダの武漢工場(4月8日撮影) Aly Song-REUTERS

<人を「コスト」でなく「財」としてみる。そんな日本の姿勢がかつて世界を魅了した意味を、多くの外国人労働者を受け入れる今こそ考えたい。本誌「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集より>

日本の将来を左右する「出入国管理及び難民認定法の改正案」が2018年12月に可決・成立した。国家の長年の方針を大どんでん返しする法案であるにもかかわらず、国会において熟議されることなく、与党の数の論理で押し込まれた印象は否めない。国民が消化不良のまま迎えた「移民開国元年」の昨年を経て、世界中がコロナ禍真っただ中の今年4月、改正法は満1歳の誕生日を迎えた。

2020050512issue_cover_200.png後に「あの時が日本にとって大事な局面だった」と振り返るであろう、歴史的な1ページを私たちは生きているに違いない。そしてこれは、かつて輝いていた日本的経営の「復活」にも大いに関わる話だと思う。

30年ほど前にも、日本はまとまった数の外国人労働者を受け入れた。それは日本人の慎重な国民性が表面化した瞬間でもあった。どうしても受け入れるなら、どこの馬の骨か分からないのでは困ると、かつて幸せを求めて祖国を離れ、海を渡った日本人の子孫に対象を限定した。血統主義を頼りに同質性に期待を寄せられ、迎え入れられた日系人だが、血の濃さより育った文化が勝っていたため、住み働くようになった企業城下町を中心に、受け入れ側も日系人労働者たちも狐につままれたような気持ちを味わうことになった。

「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と叫ばれた1980年代の日本はまぶしかった。当時、国内にとどまらず、世界に華やかに羽ばたいた日本経済のパワーに魅せられ、日系ではない私のような人間も大勢この国にやって来た。そして何よりもこの国を世界のトップに牽引したエンジンは、人を大切にする「日本的経営」であると知り、世界中が稲妻に打たれたかのような衝撃を受けた。労使対立が固定化し、性悪説に立った両者間の人間不信と緊張関係を基とするトップダウンの企業文化が主流だった時代に、その真逆ともいえる画一的で、労使協調型の「日本的経営」はやはり驚きでしかなかった。

日本的経営の海外移転の可能性も大きなテーマとなった。画一的な日本的経営が各国で導入されたときは予想どおり、威厳を失うことを嫌った現地のホワイトカラーが露骨に反発した。だが、それまで階層制の中で虐げられてきた、組織の大多数を占める一般工員からは人気を博した。

家族のような企業慣行に驚く

私の母国スリランカなど英国式が根付いている国々の企業文化にはステータス・ギャップという概念があり、例えば社内で使用するトイレや食堂は管理職、事務職と工員とで分かれている。そのような階層性の強い文化圏に、職位などを気にせず同じユニフォームを着用し、始業時はみんなでラジオ体操をし、仲間意識を持って助け合って仕事をこなし、仕事が終われば上司と部下が仲良く飲みに行く、まるで家族のような日本的慣行は大きなショックを与えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NTT、4ー9月期の営業収益が過去最高更新 島田社

ビジネス

午後3時のドルは153円後半、9カ月ぶり高値更新後

ワールド

中国、人民元国際化へ香港の役割強化へ 本土市場との

ワールド

中国、来年APEC巡る台湾の懸念否定 「一つの中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中