最新記事

ネット

アマゾンの法人税が楽天より驚異的に少ない理由とは? ネットの巨人に根付く「タダ乗り」精神

2019年11月18日(月)12時30分
横田 増生(ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

租税回避は違法ではないが...

租税回避が違法でないのなら、なぜここで取り上げる必要があるのか。租税回避と脱税とは紙一重であり、金融機関や会計事務所、コンサルタントが生み出した複雑怪奇なスキームを使って、納税額を法律の枠で認められたぎりぎり最小限に押し込める。

しかし、租税回避や節税、脱税の境界は極めてあいまいであり、所得や利益を海外にあるタックス・ヘイブンに逃がし、本来なら、納めるべき税金を払わないで済ませているのがアマゾンを含むGAFAに代表される国際企業なのだ。

そうした国際企業が応分の税金を支払うことから逃れるツケを負わされているのが、中所得や低所得の市民である。タックス・ヘイブンなどを舞台とした租税回避によって、富める企業はますます富み、貧する者はますます貧するという負の構図が生まれているからだ(志賀櫻著『タックス・ヘイブン』)。

強く根付く「タダ乗りのDNA」

アマゾンの租税回避を知るうえで大切なのは、この考え方が、アマゾンのDNAに深く刻み込まれている、ということだ。税金によって作られる道路や上下水道、病院などの社会インフラを活用しながらも、あらゆる手を使って納税額を最小限に抑え、その分を事業発展に使うという"フリーライダー(ただ乗り)"のDNAだ。

ベゾスが繰り返し語るアマゾン誕生物語では、ウォール街の金融機関を辞めてアマゾンを起こそうと思ったベゾスが、祖父の自宅のあったテキサス州で車を借り、マッケンジーがハンドルを握り、助手席でベゾスが事業計画書を書きながら、西へと向かった。そして、マイクロソフトなどの本社などがあるため優秀なIT人材が豊富で、書籍の取次の大型倉庫にも近いという理由でワシントン州シアトルを創業の地に選んだ──ことになっている。

しかし、1996年の米ネットメディア《Fast Company》でのインタビューで、創業の地をシアトルに選んだ理由を尋ねられ、ベゾスは税金対策のためだったと答えている。

私の知る限り、ベゾスがアマゾンの税金対策について率直に語った唯一の機会である。

まだ株式を上場したばかりのこのころ、後年にアマゾンの租税回避の問題が、アメリカ国内だけでなく、世界各国を巻き込んだ大問題に発展するなど、ベゾス自身も想像していなかったため、警戒感が薄く、うっかり口を滑らせてしまったのだろうか。しかし、このネット時代、過去の発言の多くは、時間を経てもネット上に残り簡単に手に入れることができる。

先のインタビューで、ベゾスはこう話している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始へ

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの

ビジネス

中国の主要国有銀、元上昇を緩やかにするためドル買い

ビジネス

英建設業PMI、11月は39.4 20年5月以来の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中