最新記事

ライフプラン

裏口入学は割に合うのか? 米一流大不正事件の投資利益率を考える

2019年3月19日(火)10時15分

損か得か

5年前、サンフランシスコ地区連銀のメアリー・デイリー総裁(当時は調査部門のアソシエートディレクター)は、大学費用は長期的に見ると、その費用に見合うことが多いと、論文で主張した。2014年の時点で年間2万1200ドルの費用を支払っていた4年制大学の学生は、38歳までに高卒の人と損益の差がなくなり、定年退職するまでには累計83万1000ドル多く利益を得ることになると結論づけている。

しかし、入学するために120万ドルを事前に使い、その後、学費やら生活費やらで年間7万ドル超かかる前出のイエール大に入学した女子生徒の場合はどうだろうか。卒業までに計148万ドルかかる計算だ。

デイリー氏のアプローチを手がかりに、平均所得に関するより新しい政府データを加味してロイターが分析したところ、年間の学費7万ドルを払った大卒者は、生涯仕事をする中で、高卒者よりも収入が130万ドル多いことが分かった。

だがこの女子生徒の場合、親戚が賄賂を贈ったことで、イエール大を卒業するまでにかかる正規の費用の5倍以上かかったことになるため、全費用は彼女が64歳になるまで回収できないことになる。

裕福な親が関与するケースの多くでは、子どもの将来的な収入は、自分の子どもがイエール大やスタンフォード大で学んでいると自慢できることに比べ、あるいは、有力な一流大卒業者とのコネクションを築けることに比べ、重要ではないようだ。

とはいえ、今回逮捕されていなかったら、子どもが得られる収入だけ見ても「収穫」といえるケースもあった。

UCLAのような費用が比較的安い大学では、前出のアイザック被告の場合、賄賂25万1000ドルと4年間の学費などの費用14万ドルを合わせたコストの全体は39万1000ドル。娘の生涯所得は120万ドル超のプラスとなる。

一方、テレビドラマ「デスパレートな妻たち」などへの出演で知られる女優フェリシティ・ハフマン被告のような親の場合、子どもの入試の点数をかさ上げするために1万5000ドルしか支払っておらず、「収穫」はより大きくなっていただろう。この子どもが卒業したと仮定すると、高卒者と大卒者の平均年間所得の差である2万2000ドルだけみても、初期の「投資」は容易に回収できるだろう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

FRB窓口貸し出し、「悪評」抑えるルール整備を検討

ワールド

中ロは相互支援強化すべき、外相会談で王氏が訴え

ビジネス

FRB当局者、インフレ低下持続か「判断は尚早」 慎

ワールド

インタビュー:ウクライナ、同盟国の支援加速・直接関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中