「日本企業は今の半分に減るべきだ」デービッド・アトキンソン大胆提言
新卒は3.6年に1人しか採れなくなる
ただし、今回この本のために分析をしていると、新発見がありました。それは、人口減少に呼応する形で、近年、経済の自動調整がすでに始まっているということです。
幸いなことに、企業数は減っており、特に生産性の低いところから静かに減っているのです。企業数全体は、1995年の389万社から、2015年には352万社まで減りました。1社あたりの社員数も増えており、全体で見ればいい方向に進んでいると評価できます。特に、給与が最も少ない、従業員10人未満の企業の数が最も減っているのは安心材料です。
給料が少ない企業の存続が今後ますます難しくなるのは、生まれてくる子どもの数と企業の関係を見ればわかります。1958年には企業1社に対して、日本では3.1人の子どもが生まれました。これは、将来的に企業は1社あたり平均して年に3.1人の新卒者を雇うことができたことを意味しています。
一方、2015年には1企業あたりの出生数が0.28人まで減っていますので、将来的に新卒者を雇いたくても、企業は平均して3.6年に1人しか雇うことができません。
今後、人口が減れば減るほど、企業は採用に苦しむこととなります。これでは企業数を維持しようとしても、無理なのは一目瞭然でしょう。
では「中途を雇え」と思われるかもしれませんが、1企業あたりの生産年齢人口を見れば、それも難しいことがわかります。
1975年には、1企業あたりの生産年齢人口は37.7人でした。今後、企業数が減らないと仮定すると、2060年には、この数が12.7人まで減ります。逆に、1企業あたりの生産年齢人口が変わらないと仮定して2050年の企業数を計算すると、約204万社。つまり、2050年までに148万社減少する計算になります。
一方で、生産年齢人口の減少に伴う労働力不足を補う方法として、ロボットとAIの活用を挙げる議論をよく耳にします。政府も「AIを使って生産性改革を」という呼びかけを盛んに行っています。その裏には、企業数を維持しようとする魂胆のようなものが透けて見えます。
たしかに、人口が減り、労働者が減る分の仕事を補填するために、ロボットに代わりをやってもらったり、AIを使って工程を効率化したりすれば、労働人口の減少には対応できるかもしれません。そうすれば、企業数を守ることもできるかもしれません。
しかし、日本では人口減少に伴い需要自体が減るので、せっかく作っても買う人がいなくなります。供給過剰分をすべて輸出できると考えるのはあまりに楽観的すぎるので、結局、日本の企業の数は減ってしかるべきなのです。
くだらない例で言えば、散髪をする人間が減っても、ロボットにやってもらえば美容室の数を守ることはできるかもしれません。しかし人口が減る中で、誰の髪の毛を切るのでしょうか。日本人が消費しなくなる分を輸出することができなければ、過当競争になるだけです。