最新記事

日本経済

「日本企業は今の半分に減るべきだ」デービッド・アトキンソン大胆提言

2018年3月3日(土)10時35分
デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社社長)※東洋経済オンラインより転載

toyokeizai180303-2.jpg

3月12日、丸善丸の内本店にて『新・生産性立国論』の刊行を記念した講演会を開催します。詳しくはこちら(撮影:今井康一)

人口が増えて、企業数も増加した

これから数十年、日本の人口が減ってしまうのは、もはや避けがたい現実です。経済への打撃も、社会へ変革を迫る圧力が高まることも抗いがたい事実です。

しかし、これからの日本経済は、実は生産性が上がりやすい環境となります。なぜなら、人口の極端な減少によって経済が激変するからです。ただしこの状況を生かすも殺すも、経営戦略と国の政策次第です。

すでにその流れができ始めていますが、経営者は進んでM&A相手を探すべきです。かつて21行あった大手銀行が今は3行まで減ったように、ドラスティックな変革が求められます。政府が実施するべき政策はいくつかあるのですが、まずは「企業の数を削減」することが非常に重要です。私は、日本企業の数は今の半分まで減るべきだと考えています。

先進国の例をみると、企業数と人口の間には一定の相関が認められます。日本でも、戦後、人口が他国に類をみないスピードで増加するのに伴い、企業の数も大きく増えました。

toyokeizai180303-3.png

しかし、先ほど説明したとおり、日本ではこれから数十年にわたって、生産年齢人口が他の先進国を大きく上回るスピードで減っていきます。それに伴い需要も大幅に減ります。人口の増加に伴って増加した企業の数は、人口が減るのであれば、それに伴い減少すべきなのは当然のことです。

要するに、消費者が減っているのですから、十分に企業数と供給量を減らさないと供給過剰となり、過当競争になって、デフレに拍車をかける結果になるのです。

企業の数を減らすべきもう1つの理由は、日本で長年にわたり低下し続けてきた、日本企業の経済合理性にあります。

toyokeizai180303-4.png

日本経済が最も輝いていた高度経済成長の時期には、日本の1企業あたりの社員数は25人でした。しかし、1964年をピークにその数は減り始め、1985年には13人程度まで減りました。その後回復基調にはあるものの、いまだに16人程度の水準です。

1964年以降に増えた企業は、主に従業員数10人未満の企業でした。日本企業をみると、企業の規模が大きくなればなるほど社員の平均給与が増えますので、給与の低い企業を中心に企業数が増えたことになります。規模の経済が働かない企業が増えて、企業の経済合理性が継続的に低下していたことがわかります。

人口が増えている間は、この件がクローズアップされることも、経済への悪影響が表面化することもなかったのですが、人口の伸びが止まり、逆に人口減少が始まって以降は、しだいにその問題が顕在化し、デフレ問題、格差問題という形で現れています。

人口がこのまま減り続け、1社あたりの平均人数が2060年に25人になると仮定すると、今現在の約352万社から、なんと約131万社まで減る計算になります。机上の計算ではありますが、実に約221万社の減少です。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中