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17年トップ車種「プリウス」が絶対王者ではなくなった理由

2018年3月17日(土)13時07分
小林敦志(フリー編集記者)※東洋経済オンラインより転載

ハイブリッド車の需要が分散化

4代目プリウスが国内乗用車の絶対王者といえる存在ではなくなってきているのには、いくつかの要因があると筆者は考えている。

まず、3代目の時代よりもトヨタ自体のハイブリッド車の選択肢が増えた。自販連によれば、2017暦年の乗用車ブランド通称名別ランキングのトップ10内にトヨタ車は計6車(「プリウス」「アクア」「C-HR」「シエンタ」「ヴィッツ」「ヴォクシー」)がランクインしている。これらはいずれもハイブリッド車仕様をラインナップしている。つまりトヨタ内でもそれだけハイブリッド車の需要が分散化してしまっている。

たとえば、カローラにハイブリッド車が設定されたことが、プリウスから営業車としてのニーズを一部食ったという指摘がある。時代錯誤と言われるかもしれないが、日本では全幅が1700mm超の3ナンバーサイズの車に乗っていることで、「儲かっている」「景気がいい」「お金持ちだ」などと見られたくないと、得意先に忖度する事業者も一部いるようで、3ナンバーのプリウスよりも5ナンバーのカローラのほうがその点は有利になる。

カローラにはセダン(現行は「カローラ アクシオ」)だけでなく荷物がたくさん乗るワゴン(同「カローラ フィールダー」)もあり、営業車として考えたときに燃費に大きな差がないのなら、プリウスではなくカローラハイブリッドを選ぶ事業者も少なくないのだろう。

エコカーの選択肢がプリウス以外にも広がったのも要因といえる。3代目デビュー時点ではホンダのハイブリッド車「インサイト」が唯一無二の競合車種だったが、今は「エコカー」も多様化している。

たとえば、「SKYACTIV-D」で知られるクリーンディーゼルエンジンを搭載するマツダ車。ディーゼルエンジンはパワフルな特性ながら価格の安い軽油を燃料に使い、燃費性能も高い。かつては大気汚染の原因の1つと厳しく批判されたが、欧州を中心に海外ではさまざまな技術改良によって厳しい排ガス規制をクリアできるディーゼルエンジンがあり、マツダもその1つとして、実用性以上に好意的に見ている消費者も少なくない。

三菱自動車のプラグインハイブリッド車仕様である「アウトランダーPHEV」のような新世代エコカーも出てきている。プラグインハイブリッド車とは、家庭用電源コンセントなど外部からプラグを介して直接バッテリーを充電できるようにしたハイブリッド車のことで、EV(電気自動車)とHV(ハイブリッド車)のいいトコどりをしたエコカーだ。

日産の最量販車種となったノートにも、「e-Power」と呼ばれるパワーユニットを搭載したエコカーが売れ筋となっている。エンジンとモーターを併用する点ではプリウスと同じハイブリッド車だが、エンジンが発電機を回すことに徹しているのが特徴だ。

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