最新記事

日本を置き去りにする 作らない製造業

日本の製造業がインダストリー4.0に期待するのは「危険な発想」

2017年12月13日(水)18時04分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

magSR171213-2.jpg

欧州系コンサルティング会社ローランド・ベルガーの日本法人会長、遠藤 功 Newsweek Japan

――ドイツ製「インダストリー4.0」などに期待する声もある。

危険な発想だ。ドイツと日本では製造業の強みは全く異なる。ドイツは品質というより商品開発、ブランドの強さが売りだ。清掃機器メーカーのケルヒャーがその典型だろう。さほど高度な技術を使っているわけではないが、独創的な製品が人気を博し、今では圧倒的なブランド力を備えている。

強みは商品のコンセプトとブランドにあるのだから、製造現場にこだわりはない。デジタル化により最終的に無人工場を目指しているのもそのためだ。

日本は逆にブランド構築は苦手で、ものづくりのプロセスの中でイノベーションを生み出してきた。カップ麺、温水洗浄便座、ハイブリッド車、炭素繊維などいずれもそうだ。現場を全て人工知能(AI)やロボットに置き換えれば、日本の強みは失われてしまう。

新たな技術を導入するのは当然だが、どこかにアナログ的な要素を残しておくことが必要だ。

「日本人にはディズニーランドは作れない。だがアメリカ人に旭山動物園は作れない」と私は常々言っている。天才経営者の発想を具現化する力ではアメリカが上だ。一方、旭山動物園は個々の動物をいかに生き生きと見せるかという現場の実践知の積み重ねで成功した。これこそ日本の強みだ。

日本の製造業に変化は必要だが、それは他国の事例をむやみに模倣するものではなく、日本型ものづくりのアップグレードでなければならない。さもなくば失敗あるのみだろう。

※「日本を置き去りにする 作らない製造業」特集号はこちらからお買い求めいただけます。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国防総省、イランで数週間にわたる地上作戦を準備=

ワールド

日曜●アングル:トランプ氏製造業政策の「光と影」、

ワールド

再送フーシ派がイスラエル攻撃、イエメンの親イラン武

ワールド

再送-UAEのアブダビで5人負傷、火災も発生 ミサ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?...「単なるホラー作品とは違う」「あの大作も顔負け」
  • 4
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 9
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 10
    「酷すぎる...」ショッピングモールのゴミ箱で「まさ…
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 10
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中