最新記事

ワークプレイス

クオリティ・オブ・ライフの尊重がゲームの未来を切り開く

2016年1月15日(金)11時12分
WORKSIGHT

wsNHN_2.jpg

1階ロビーにはブロック状のカラフルなソファを配置。カジュアルでクリエイティブな同社のイメージを訪問者に伝える。

wsNHN_3.jpg

「ハイブ」と呼ばれるスペース。英語の「ミツバチの巣箱」の意味から、「クローズドな打ち合わせスペース」を表す。中階段の周辺にはこうしたボックス型の会議室が点在している。

 だが、同社が何より重視したのは「コミュニケーション」のスピードアップだ。「プレイ・ミュージアム」の大部分は、そのためにこそ設計されたものだと言える。

 ヤン・ソンユル氏が同ビル最大の特徴として挙げるのは、「プレイ・ミュージアム」中央に位置する「中階段」である。これが、フロアによって分断されている社員たちを繋げる触媒としての機能を果たしているという。

中階段を起点としたコミュニケーションが社内のリンクを作る

 以前のオフィスは、階段といえば「非常階段」であり、オフィスの片隅に追いやられていた。そもそも高層ビルに入居していると社員がフロア間を移動する機会はまれ。フロアが異なる社員と顔を合わせることは少なく、他部署の社員と会うためにわざわざ日程を調整し、会議室を予約することもしばしばだった。そのため、コミュニケーションはメールや電話が中心。プロジェクト終了まで顔を合わせないことすらあった。

「私には、それがとても非効率的な働き方に見えました。気軽に『あの人とディスカッションしてみようか』という気になれない環境では、スピード感をもって仕事を進めることは難しいと感じていたのです」(ヤン・ソンユル氏)

 この問題を解決したのが「中階段」だった。オフィス中央部に階段を配置したことで、フロアの異なる社員同士が頻繁に顔を合わせるようになった。偶然すれ違った2人が階段の踊り場で打ち合わせを済ませてしまうなど、社員同士の意思疎通や業務処理のスピードは格段に増した。

 コミュニケーションの活性化から始まる、業務のスピードアップ。「HIVE(ハイブ)」と呼ばれるボックス型の小さな会議室が点在するのも同じ意図によるものだ。ハイブは、エレベーター付近や人通りの多い場所に設置した。偶然すれ違った者同士の会話が弾み、そばにあるハイブで腰を据えた会議に発展することも多いという。中階段付近には冷蔵庫やトースター、コーヒーマシンなどを備えたハイブがあり、社員間のカジュアルなコミュニケーションを促している。

率直で飾りのないやりとりがクリエイティビティを生む

 またフラットな空間作りは、上司と部下間のヒエラルキーを感じさせない。10階の会議室は「スーパーフラット会議室」と名付けた。「輪」になって座るため、どこが上座、下座と決められておらず、参加者全員が同等な立場で討論ができる。上司ばかりが話し続ける垂直的な会議ではなく、さまざまな年齢、役職の人が議論しあう会議こそが創造的であり建設的、との社風が表れている。

wsNHN_4.jpg

(左)NHNエンターテインメント・デザイングループ長ヤン・ソンユル(Sung-Yul Yang)(右上)スーパーフラット会議室。ゲーム企業らしく、現代アートに囲まれた明るくカジュアルな空間。(右下)FGT(Focus Group Test)ルーム。ゲームを市場にリリースする前に、ユーザーを集めて事前テストを行う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

任天堂、「スイッチ2」を6月5日に発売

ビジネス

米ADP民間雇用、3月15.5万人増に加速 予想上

ワールド

脅迫で判事を警察保護下に、ルペン氏有罪裁判 大統領

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中