クオリティ・オブ・ライフの尊重がゲームの未来を切り開く
だが、同社が何より重視したのは「コミュニケーション」のスピードアップだ。「プレイ・ミュージアム」の大部分は、そのためにこそ設計されたものだと言える。
ヤン・ソンユル氏が同ビル最大の特徴として挙げるのは、「プレイ・ミュージアム」中央に位置する「中階段」である。これが、フロアによって分断されている社員たちを繋げる触媒としての機能を果たしているという。
中階段を起点としたコミュニケーションが社内のリンクを作る
以前のオフィスは、階段といえば「非常階段」であり、オフィスの片隅に追いやられていた。そもそも高層ビルに入居していると社員がフロア間を移動する機会はまれ。フロアが異なる社員と顔を合わせることは少なく、他部署の社員と会うためにわざわざ日程を調整し、会議室を予約することもしばしばだった。そのため、コミュニケーションはメールや電話が中心。プロジェクト終了まで顔を合わせないことすらあった。
「私には、それがとても非効率的な働き方に見えました。気軽に『あの人とディスカッションしてみようか』という気になれない環境では、スピード感をもって仕事を進めることは難しいと感じていたのです」(ヤン・ソンユル氏)
この問題を解決したのが「中階段」だった。オフィス中央部に階段を配置したことで、フロアの異なる社員同士が頻繁に顔を合わせるようになった。偶然すれ違った2人が階段の踊り場で打ち合わせを済ませてしまうなど、社員同士の意思疎通や業務処理のスピードは格段に増した。
コミュニケーションの活性化から始まる、業務のスピードアップ。「HIVE(ハイブ)」と呼ばれるボックス型の小さな会議室が点在するのも同じ意図によるものだ。ハイブは、エレベーター付近や人通りの多い場所に設置した。偶然すれ違った者同士の会話が弾み、そばにあるハイブで腰を据えた会議に発展することも多いという。中階段付近には冷蔵庫やトースター、コーヒーマシンなどを備えたハイブがあり、社員間のカジュアルなコミュニケーションを促している。
率直で飾りのないやりとりがクリエイティビティを生む
またフラットな空間作りは、上司と部下間のヒエラルキーを感じさせない。10階の会議室は「スーパーフラット会議室」と名付けた。「輪」になって座るため、どこが上座、下座と決められておらず、参加者全員が同等な立場で討論ができる。上司ばかりが話し続ける垂直的な会議ではなく、さまざまな年齢、役職の人が議論しあう会議こそが創造的であり建設的、との社風が表れている。