最新記事

シリーズ「仕事を科学する」

「働きやすい制度」が生産性を下げてしまう理由

2015年10月28日(水)11時43分

wcbook151028-b.jpg

 フレックスタイム制を採用しても、コアタイム(必ず勤務しなければいけない時間帯)を設けていれば問題ないのではないかという議論もありますが、ここに大きな落とし穴があります。

 じつは先に触れたように、仕事の60%以上がコミュニケーション絡みなのです。

 前項で述べたように、仕事を「業務処理」と「情報処理」で分けると、情報処理がコミュニケーション絡みの仕事です。

 さらにいえば、書類作成やパソコン入力などの「自分ひとりでやる仕事」が業務処理、会議や商談などの「他人と共同でやる仕事」が情報処理、と分類することができます。

 そして、この2つの仕事への投下時間を調査すると、業種、業態、企業規模にかかわらず、各社がおおむね4対6の割合になります。

 つまり、全体の6割を占めるコミュニケーション絡みの仕事をたった2〜3時間のコアタイムでこなそうというのは、どだい無理な話なのです。

 また、フレックスタイム制を安易に導入すると、従業員のコミュニケーションが寸断され、孤立感が深まります。ストレスが増大しても、なんら不思議ではありません。

 このようなフレックスタイム制の欠点は、仕事を「自分ひとりでやる」場面と、「他人と共同でやる」場面に分けて考えることで明確になります。また、そうした視点をもっていれば、フレックスタイム制の欠点をカバーする方法も見つかります。

 フレックスタイムは、裁量労働のひとつとして位置づけられてもいますが、そもそもこの裁量労働は極めて怪しく、危険です。

「仕事のしくみ」から見れば、私たちの仕事の60%以上はコミュニケーション絡みで成り立っています。つまり、自己責任の部分は40%しかないということでもあります。

 また、仕事の60%以上がコミュニケーション絡みであれば、「仕事を速くする」とは「コミュニケーションを速くする」と言い換えることも可能です。

 ところが、フレックスタイムを導入している企業では、朝一番でコミュニケーションをしたくても相手がいないため、後手に回る危険性が高くなります。それが業績の足を引っ張ることになっていると、私は強く感じています。

※抜粋第2回:フレックスタイム制をうまく機能させる方法 はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、年内の進展に期待 トランプ氏との会

ワールド

オデーサなどで外国船舶損傷、ロシアが無人機攻撃=ウ

ワールド

プーチン氏、領土交換の可能性示唆 ドンバス全域の確

ビジネス

トヨタ、2026年の世界生産1000万台超を計画 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中