最新記事

発想術

「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」とヤングは言った

2015年10月26日(月)16時20分

 そしてもちろんアイデアもそうだ。このように、知っているものがそこに存在するとき、わたしたちはそれが「ある」ことを感じる。わたしたちのなかの何かが認識する。でも、それを明確に説明しろと言われると困ってしまう。

 試しにアイデアがどう定義してあるのか、辞書をのぞいてみよう。びっしりと説明してある。

「思考、知識などのように精神活動の生産物として心のなかに実在する、または実在する可能性のあるもの」

「最高のカテゴリーに属すもの。理性による完全かつ究極の産物」

「実在するものでは完全には表現できない、超越的な存在」

 ......失礼。かえって混乱させてしまったようだ。

 ところが、周囲の人にアイデアの定義を尋ねてみると、もっとわかりやすい答えが集まった。南カリフォルニア大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校でわたしが同僚や受講生からもらった答えを紹介しよう。

「あまりにも当たり前のことなので、誰かに言われた瞬間、何で自分は思いつかなかったのだろう、と思うもの」

「アイデアは一つの状況のすべての面を集め、それをシンプルな形にまとめる。ばらばらになっていたすべてのひもの端を、一つのきれいな結び目にする。その結び目をアイデアと言う」

「普遍的に知られている、または認められているものが、まったく新しい、独自の、思いもおよばない方法で提示されているのに、何の抵抗もなくすっと受け入れられるもの」

「それまでの流れからは予想もつかない、新しいもの」

「物事を新しい観点から見せてくれる、ひらめき。それによって、別々のもののように見えていた二つの考えが一つの新しい概念になる」

「アイデアは、複雑なものをびっくりするほどシンプルに統合してしまう」

 こうした定義(実際のところ、これらは「定義」というよりは「描写」なのだが、本質をとらえているから問題ないだろう)を読むと、「当たり前」「ひらめき」「統合」という言葉によって、とらえどころのなかったアイデアの概念がだいぶつかめてくる。

 だがわたしが一番気に入っているのは、ジェームス・ウェブ・ヤングの説明だ。これは本書の土台にもなっている。

「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」

 わたしがこの説明を特に気に入っているのには、二つの理由がある。第一に、ここにはアイデアを得る方法が明示されている。アイデアを手に入れるのは、新しい料理のレシピを作るようなものだと教えてくれているのだ。すでに知っている材料を、これまでとは違った方法で組み合わせるだけ。アイデアを得るというのは、こんなに単純なことなのだ。

 単純というだけでなく、これは天才でなくてもできる作業だ。ロケットを開発する科学者である必要もなければノーベル賞受賞者である必要もない。国際的な画家や詩人、腕ききの広告マンでなくてもいい。ピュリッツァー賞受賞者や世界的に有名な発明家でなくても大丈夫なのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中