最新記事

企業

今こそ持続可能なグローバルビジネスを

新興市場では短期的な混乱に過剰反応せず、長期計画で投資し、レジリエンスとインテリジェンスを身につけよう

2015年8月28日(金)19時22分
ニナド・パセック(CEEMEAビジネスグループ共同CEO、グローバル・サクセス・アドバイザーズ社長) ※Dialogue Review Jun/Aug 2015より転載

未来を見据えて 新興市場でシェアを拡大するには、他社を出し抜く先行投資が必要だ(インドのムンバイ) Liufuyu - iStockphoto.com

 国際市場における競争は史上類を見ないレベルにまで達しており、将来的にもさらに激化することだろう。これは手垢のついた表現に見えるかもしれないが、紛れもない真実だ。

 競争が激化している根拠は四つある。一つめは、成長を求める多国籍企業が、新興市場にさらに注力するようになってきていることだ。

 第2に、新興国に本拠を置く多国籍企業の動きがかつてないほど活発になっている。中国やインド、ブラジル、トルコ、南アフリカなどの多数の企業が海外に進出している。

 三つめの根拠は、中規模の欧米企業も、これまで進出していなかったような他国の市場に進出しているということ。そして四つめには、単純なことだが、ほとんどの海外市場で地元の競合企業がますます力をつけていてきていることが挙げられる。

 こうした状況のなかでグローバルな成長を本気でめざすのであれば、以下の質問を自らに問いかけてみるといい。

・自社の国際ビジネスは、持続可能なやり方で構築できているか?
・自社の仕組みは、それぞれの市場での競争において優位に立てるものか?
・それぞれの市場で激化しつつある競争にどれだけ耐えうるか? あらゆるタイプの競合企業に対する障壁を築いているか?
・現地の事情に適合しているか?
・今後数十年にわたり収益を上げつづける持続可能なビジネスを生み出すために、すぐに埋めなければならないギャップは何か?

新興市場のスローダウンは根本的な問題ではない

 日和見主義で場当たり的なアプローチをする企業があまりにも多い。その根本原因は、いわゆる「短期主義」にある。短期主義とは、3カ月単位の目標達成に注力しすぎることを指す。過去25年の間に多くの新興市場戦略が失敗に終わったのは、何よりこの「短期主義」が原因なのだ。

 国際ビジネスをある程度深掘りするには費用がかかる。しかもその見返りはすぐには得られない。他社を出し抜く先行投資が重要なのだが、しばしばそれは四半期の収益に悪影響を及ぼす。それゆえ、短期の株価を押し上げるために手の届く範囲でしか国際ビジネスを行わないCEOがあまりにも多い。

 彼らが投資を渋る言い訳で最近よく聞くのは、新興市場が成長の速度をゆるめている、というものだ。見返りが得られるかどうか怪しい状況で資金を投下するのはナンセンスだというのだ。しかし彼らは、新興市場のスローダウンが、根本的な問題ではないことを見落としている。その多くは一時的に下向きのサイクルに入っているだけなのだ。

 これまで多くの企業は先進国市場の大規模なビジネスに注力しがちだった。新興市場はあくまで先進国市場を補うものであり、利益があれば多少上乗せする、といった程度の位置づけにすぎなかった。だがこれからは、新興市場にも先進国市場と同じくらい注意を払っていくべきだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「同意しない者はFRB議長にせず」、就任

ワールド

イスラエルのガザ再入植計画、国防相が示唆後に否定

ワールド

トランプ政権、亡命申請無効化を模索 「第三国送還可

ワールド

米司法省、エプスタイン新資料公開 トランプ氏が自家
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 9
    砂浜に被害者の持ち物が...ユダヤ教の祝祭を血で染め…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中