最新記事

エンターテインメント

日本から世界へ広がる「リアル脱出ゲーム」とは何か

2015年6月3日(水)11時35分
スチュアート・ミラー

仕掛けを駆使して進化

 日本でコンピューターゲーム「クリムゾン・ルーム」として誕生し、世界的な現象を引き起こした脱出ゲームは、その後07年に同じく日本で実体験型へと発展。アジアから東ヨーロッパへと広がり、12年に日本のSCRAP社の「リアル脱出ゲーム」がサンフランシスコに上陸すると、驚くべき勢いで拡大した。「出来のいいものは、さながら芸術作品だ」と、スピラは言う。

「ルームエスケープ・アドベンチャーズ」を運営するマーティー・パーカーは、今年末までに全米の80を超える会場で300以上のゲームが開催されるとみている。かつてデイトレーダーとして働いていたパーカーは、「エンターテインメント業界の次の一手」を探していたという。

 脱出ゲームは、「びっくり効果」と呼ばれる仕掛けを次々と繰り出し、急速な進化を遂げてきた。ブラックライトや秘密の通路、抜け穴などはもはや常識。初期には数字パズルや鍵に頼りがちだった謎解きも、より複雑なパズルやヒントの組み合わせへと姿を変えている。

 中には真に独創的なものもある。スピラのチームのカシチオが言うには、これまでで気に入ったのは、心肺蘇生訓練用の人形の体内から内視鏡でヒントを探るというものや、通りの向こうにある店の看板を双眼鏡で見て初めて手掛かりがつかめる、といったものだ。

 個々の会場ごとのテーマやストーリーにも重きが置かれる。参加者は手掛かりが決してでたらめではなく、互いに関連していることに気付くに違いない。例えばSCRAPのタイムトラベル型のゲーム。謎を解くため「過去」の部屋と「現在」の部屋が切り替わったりする。

 必要な手掛かりの数は限られている場合もあれば、膨大な謎解きを要求する部屋もある。ニューヨークで「ミステリールーム」を運営するエリック・シウは参加者が苦戦しているようであればヒントを与える。「自然に任せたいところだが、ヒントなしには90%の人が参加料金の元を取れるほど楽しめなくなってしまう。そうなればこの業界も崩壊だ」と、パーカーは言う。

 ゲーム開始から35分、順調に進んでいたスピラのチームだが、リズナックが難しい数字配列の解読に手間取ってしまった。ついにお手上げ、他のメンバーに託したが、解ける人はいない。イライラして諦めの空気が漂いかけたとき、積み上げていた「処理済み」のヒントの山の中に見落としていた手掛かりがあることに気付いた。それを見直してみると数字配列は簡単に解明。答えがピタッと収まった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ガザ市住民の避難に新ルート開設 48

ワールド

南アCPI、8月は予想外に減速 金融政策「微妙な判

ビジネス

英8月CPI前年比+3.8%、米・ユーロ圏上回る 

ビジネス

インドネシア中銀、予想外の利下げ 成長押し上げ狙い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中