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ロシア経済は今が買い時? 逆境下の団結が生んだ好景気

2015年4月23日(木)12時03分
河東哲夫(本誌コラムニスト)

今どき世代はソ連知らず

 この4〜5年、社会が安定するにつれ、細かい規則や小役人が幅を利かすようになり、雰囲気は「ソ連的」になってきた。ソ連崩壊直後はリベラルだった当時の若手世代は権力を握って以来、すっかり保守化してしまった。彼らを支える50代以上の大半には、ソ連的な官僚主義、権威主義が染み付いている。

 しかし今回、研究機関や講義で議論してみると、「ソ連的遺伝子」を持たない若い世代の台頭を実感する。学生は屈託なく、プーチン大統領についてもウクライナ情勢についても批判的なことを平気で言う。周りよりも自分や祖国をどうするかというほうに比重がかかっている。老若の間のねじれは、これから面白いことになっていくだろう。

 欧米とロシアの関係はこれまで、「民主主義・グローバリズム」対「専制・帝国主義」の戦いと思われてきた。ところがロシアの若い世代は領土拡張に関心はなく、欧米を就職の場としてごく自然な選択肢と考えている。もはや米ロの対立はイデオロギーというより、単なる意地の張り合いになってくる。

 プーチンは東ウクライナの領有は考えていない。彼は欧米がロシアの自尊心を尊重し、過度の疎外をやめるように求めている。彼の足元、そしてウクライナ政府にも跳ね上がり分子はいるので、まだ一荒れ、二荒れあるだろうが、米大統領選でロシアが主要なイシューになることはあるまい。米国民の大半はロシアにリアルな脅威を感じていないからだ。これでは「新冷戦」も定着しそうにない。

 日ロ関係も次第に展望が開けてくる。日本はロシアの石油・ガス輸入を続けているし、日本企業はロシアから撤退していない。モスクワの街ではロシア資本の寿司チェーンが24時間、小さな車でピザのように寿司を配達して回っている。

 来月9日にモスクワで行われる戦勝記念日式典に安倍首相が赴くことは難しいだろうが、首脳間の共感は大事に維持していったらいいと思う。

[2015年4月28日号掲載]

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