原油価格決定のカギはあの国が握る
専門家の間には、アメリカが新たな「スイング・プロデューサー」になったとの声もある。需給の変化に応じて生産を増減して市場の動向を決め、原油価格の急騰や急落を阻止する重要な役割で、従来はサウジアラビアがこれを担っていた。
とはいえ、サウジアラビアは常にその役目を果たすわけではない。昨年、アメリカのシェールオイル生産増大に伴って原油価格が下落していたときも、生産を減らさなかった。下落が止まらなくなったのはそれからだ。
サウジアラビアとしては、原油安で北極海の油田開発などへの投資が鈍れば、将来的に価格は上がると判断したのだろう。自国の生産減は、アメリカの生産増を意味すると考えた上での行動だった可能性もある。
だが、アメリカの掘削規模は逆に縮小している。今や調整役を担っているのはアメリカだ。
あるいは「それに近い役目」と言うべきか。サウジアラビアと違い、アメリカに国営石油会社は存在しない。国内にひしめく小規模採掘業者は市場の動きに反応するだけで、下落を見越して先手を打ったりはしない。
掘削装置の稼働数は急減していても、実際に産出量が減るまでには時間がかかる。その一方で石油備蓄量は増え続け、おかげで原油価格がさらに下がる恐れがある。
果たして希望の光は消えるのか、残るのか......。
© 2015, Slate
[2015年2月17日号掲載]