最新記事

世界経済

世界で高まる不動産バブルの真の脅威

米サブプライム復活よりイギリスの住宅バブルより怖いのは、やはりあの国

2014年6月30日(月)12時05分
マイケル・モラン

危険水域 中国の住宅バブルは膨らむ一方だが(中国・瀋陽) Sheng Li-Reuters

 08年の金融危機の元凶となった信用度の低い個人向けの住宅融資、サブプライムローン。統計によると、この悪名高いローンに復活の兆しがある。私たちはまた同じ過ちを繰り返すのだろうか。

 住宅ローンバブルで世界が2度目の大恐慌に陥りかけてからわずか6年だというのに、カリフォルニアなどでは住宅価格が急騰。米不動産サイトはその大半を「高過ぎ」と評価した。

 バブルは世界に広がっている。ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマンは最近、過去10年で住宅価格が3倍になったスウェーデンの不動産市場にバブルを宣告した。だがスウェーデン政府は、危機当時のアメリカよりはましだと主張。家計の貯蓄率がマイナスで政府は借金まみれなどということはスウェーデンではあり得ないという。

最大の懸念は中国の銀行危機

 イギリスやカナダでも住宅価格は数年前から高騰し、バブル懸念がくすぶっている。

 だが世界のあらゆる住宅バブルの中で、何といっても一番巨大なのは中国だ。中国の不動産大手SOHO中国を率いる潘石屹(パン・シーイー)は最近、中国の不動産市場をタイタニック号に例え、破壊に向かって突き進んでいる、と指摘した。「いったん氷山にぶつかれば、不動産よりも銀行が損失を被るだろう」

 世界経済にとって、最も怖いのは中国の銀行危機だ。中国の銀行の実態は闇の中だが、世界貿易には食い込んでいる。今年6月には、ロシア企業が対外取引の決済の一部を人民元にすると発表した。ウクライナ問題をめぐる欧米の経済制裁で、米ドルが調達できなくなる恐れがあるからだ。

 もっとも、仮に中国の不動産バブルが崩壊しても、08年のような危機にはならないようだ。社会保障制度が整っていない中国では、人々の貯蓄率が高い。不動産価格が下がっても、耐え忍ぶ余地があるのだ。

 それに中国の消費はまだアメリカや日本のように世界を引っ張るほど強力ではない。内需よりも輸出中心の経済だからだ。世界最大のバブルも、心配し過ぎる必要はなさそうだ。

From GlobalPost.com特約

[2014年6月24日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

林官房長官が政策発表、1%程度の実質賃金上昇定着な

ビジネス

アングル:FRB「完全なギアチェンジ」と市場は見な

ビジネス

野村、年内あと2回の米利下げ予想 FOMC受け10

ビジネス

GLP-1薬で米国の死亡率最大6.4%低下も=スイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中