最新記事

アメリカ

米財界が驚きの提言「温暖化は危険過ぎる」

ヘッジファンドや元財務長官など超党派の大物財界人が、ビジネスにとっての温暖化の甚大なリスクに遂に気付いた?

2014年6月25日(水)15時08分
ミーガン・クラーク

これが日常に? 洪水や干ばつの被害も深刻化するだろう(4月、フロリダ州) Michael Spooneybarger-Reuter

 地球温暖化をこのまま放っておいたら、観光業から建設業までさまざまなビジネスを破壊しかねない。アメリカで今週発表された報告書「危険なビジネス」は、そう警告している。報告書の作成には左派、右派、中道寄りを問わず、さまざまな政治家や経済人が関わった。中心人物はマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長、ヘッジファンド界の大富豪トム・スタイヤー、元財務長官ヘンリー・ポールソンで、これまで類を見ないほど超党派的な連合となった。温暖化により、アメリカは今後20年で数十億ドルの損失を被る、というのが彼らの主張だ。

 今後15年にわたり東海岸やメキシコ湾岸は海面上昇、嵐、ハリケーンで350億ドルの被害を受けると、報告書は結論付けている。洪水と干ばつの増加により、今後25年間で中西部と南部の農地は最大で10%が失われるかもしれない。

温暖化は複利で膨らむ借金のようなもの

 08年の金融危機当時に財務長官だったポールソンは、報告書発表の記者会見(ニューヨーク)でこう述べた。「今日われわれは別種の危機に直面している。それは我々の経済を重大なリスクに晒し、金融危機より残酷で邪悪なものだ」

 ポールソンは「これまで通りのビジネスを続けていくのは、危険極まりないアプローチだ」とも語った。「われわれがすぐに行動すれば最悪の結果は避けられる」

 またブルームバークは、気候変動で熱波が起きれば屋外での作業は危険なものになり、よく育つ作物の種類が変わり、食品価格は跳ね上がるだろうと指摘。12年にニューヨークを襲ったハリケーン「サンディ」のような嵐がもたらす経済的リスクについて、「測定不可能。即ち、管理も不可能」と語った。
 
「気候変動は、われわれの間違った行いによって複利で膨らむ借金のようなものだ」と、スタイヤーは声明で述べた。「経営的な観点から速やかに行動することのメリットの大きさを考えると、管理不能になるまでリスクが積み上がるのを放置しておくのはばかげている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 9
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中