中国金融が抱える時限爆弾
09〜10年の金融バブルに踊ったのは、地方政府だけではない。裸で海水浴をしていた人が、引き潮になってその姿をさらすように、中国経済の成長が減速化するに従い、バブルの加担者がぞろぞろと姿を現している。
例えば、借り入れに過度に依存してプロジェクトを進めてきた不動産開発業者。彼らは今や破産寸前で生き残りに必死だ。中国のメディアでは、破綻した不動産開発業者の自殺が何件か報じられている。
破産して行方不明になったビジネスマンもいる。香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストが今年5月に報じたところによると、昨年だけで莫大な債務返済を逃れるために行方をくらませた企業経営者は47人もいたという。
銀行が秘かに行う闇融資
不動産開発の次に破綻の波がやって来るのは製造業だ。国有企業か民間企業かを問わず、製造業は恐ろしく利幅が小さい。その上設備過剰という構造的欠陥を抱えているから、景気が悪化すれば全産業で在庫と返品が急増するだろう。
だが在庫を割引価格で処分すれば、わずかな利益が吹き飛んでしまう。景気のいいときに借りた資金は、間違いなく返済できなくなる。
空前の金融危機が最大の打撃を与えそうなのは、中国の闇融資システムだ。中国の銀行は預金業務から得られる利益が乏しく(預金利率が規制されているため)、他行との預金獲得競争も厳しい。そこでここ数年、複雑で無規制の闇金融が大きな成長を遂げてきた。
典型的な例として、投資家は預金金利よりも高利回りの「資産管理商品」と呼ばれる金融商品を勧められる。規制当局の監視の目を逃れるため、その取引は銀行の帳簿に記載されない。
格付け会社フィッチレーティングス(中国)のシニアディレクターであるシャーリーン・チューによれば、今年6月末の時点で、中国における資産管理商品への投資残高は計10兆4000億元に上る。銀行への預金総額の11・5%に相当する規模だ。
銀行は資産管理商品で集めた資金を、「オモテ」の金融システムでは融資を断られる企業や不動産開発業者に貸し付けることが多い。こうした借り手は信用力が低い(返済能力が低いと見なされる)から、高い返済利率を適用される。
そのぶん銀行側にとってはリターンが大きいが、貸し倒れリスクも大きい。資産管理商品絡みの焦げ付き融資がどの程度に達するかは推測の域を出ないが、10%と控えめに見積もっても、銀行側の損失は1兆元に上る。
闇融資には別の機能もある。政府の規則では明確に禁じられている融資先や活動に資金を供給することだ。過去2年ほど、国務院は不動産バブルを抑制するため、不動産開発業者に対する銀行融資を規制してきた。