最新記事

インタビュー

彼女が「白熱教室」で学んだこと

2012年4月25日(水)18時37分
井口景子(本誌記者)

──仕事を通して自分にまだ足りないと感じる点はある?

 たくさんあって日々葛藤している。いいアイデアを提案し、それを形にする力をもっとつけたいし、会議での発言力をもっと磨く必要もある。

 もう1つは、自分を「ショーケース」する力。日本の学校では学ばないが、知識を増やすことと同じくらい、それを見せる力、伝える力が実践の場では重要になる。自分が今どんな仕事をして、どんな成果を上げているのか上司や周囲の人に伝える努力が不可欠で、そのための戦略も色々ある。グーグルに入った当初はその点の認識が足りなくて、上司が指摘してくれた。

──日本の教育現場で批判的な思考力やショーケースする力を伸ばすにどうしたらいいと思う?

 まずは、テストの内容や評価の基準を変えることだと思う。歴史のテストで「大化の改新は○○年」というような問題が出るとわかっていれば、生徒は赤い下敷きで暗記するしかない。より高度で深い思考をしたり、考えたことを表現する力を評価するシステムを学校や会社、社会が用意しないと、生徒にインセンティブをもたせることはできない。

 学校に頼らなくても、一番身近で大好きな親の意識一つで変わることもある。小学1年生で朝顔の絵を描いたとき、私一人だけ他の子と違う絵で恥ずかしかった。父に話したら、「みんなと違う目で朝顔を見ることができたんだから、すごいじゃないか!」と誉めてくれた。小さなことだけれど、ハーバードの人生設計の授業で「人生を変えた出来事」の一つに挙げたくらい、私には意味のあることだった。

──社会人にできることは?
 留学は一つの方法だが、英語力を高めるためだけに表面的な留学をするくらいなら、日本にいながら批判的なものの見方を身につける訓練はいくらでもできる。

 大切なのは、すべての物事を一歩下がって鳥瞰図で見る癖をつけること。テレビやインターネットを見るときも情報を脳に垂れ流すだけでなく、その情報がどういう意味を持つのか自分の脳で咀嚼してみる。人と話すときも、相手の言葉をそのまま受け入れるだけでなく、一歩下がって考える癖をつけるのが大切だと思う。

 あとは、そういう話ができる仲間や場所を見つけること。考えたことをアウトプットするまでが一つのプロセスだから。日本にいるから、仕事が忙しいから、と言い訳を考えるより、目の前でできることから始めればきっと自分に変化を起こすことはできる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中立金利は推計に幅、政策金利の到達点に「若干の不確

ビジネス

日銀の国債買い入れ前提にせず財政政策運営=片山財務

ワールド

米下院補選で共和との差縮小、中間選挙へ勢いづく民主

ビジネス

米ロッキード、アラバマ州に極超音速兵器施設を新設
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 4
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中