最新記事

SNS

パクリの達人、フェースブック

2011年10月19日(水)12時57分
ファハド・マンジュー(スレート誌テクノロジー担当)

 フェースブックは先週、もう1つの目玉機能も発表した。「フィード購読ボタン」の追加だ。これを使えば、相手が友達でなくても、関心のあるユーザーの更新情報を自分のページに表示させられる。何だか聞き覚えがある? そう、ツイッターで誰かをフォローするのと同じ仕組みだ。

 交流は常に双方向──それがフェースブックの特徴であり、基本理念の1つだった。だがツイッターの成功で、理念も柔軟に変更することにしたのだろう。

 同様の姿勢で付け加えた機能はほかにもたくさんある。位置情報を共有するチェックイン機能は、GPSの位置情報を利用したSNS「フォースクエア」とそっくり。チェックインクーポンは共同購入サイトのグルーポン、クエスチョン機能は質問を書き込むと誰かが答えてくれるSNS「クオーラ」と似ている。

『スター・トレック』ファンなら、目を付けたものは何でも吸収・同化する機械生命体の集合体ボーグを思い出すはずだ。フェースブックはテクノロジーという宇宙を徘徊し、発見した最高のアイデアを無慈悲に吸収していく。

 こうした姿勢には、2つの利点がある。アイデアのコピーによって、フェースブックは最大最強のSNSであり続けることができる。新たに取り込んだ機能のおかげでSNS市場の独占体制は強まり、ライバルは弱体化する。

ジョブズもたたえた盗用

 一方、ユーザーにとっても利点が大きい。フェースブックは1つの主義にしがみつかない。ザッカーバーグの見方にもかかわらず、カタンゴはコンピューターによる友達分類法の効力を証明し、ユーザーはそれを歓迎した。ならば、自分も彼らが欲しがるものを与えればいいではないか?

 模倣を繰り返してトップの座を守っていると言われれば、フェースブック側は怒るかもしれない。このSNSには、そもそもの始まりから盗用疑惑が付きまとっているのだから。とはいえザッカーバーグは、IT業界の長い「パクリの歴史」にも気付いているはずだ。この業界のトップ企業の一部は、発明と同じくらい盗用にたけている。アップルもマイクロソフトも、グーグルもそうだ。

 革命的なデスクトップコンピューターだった初代マックは、ゼロックスのパロアルト研究所で生まれたコンピューターのOS(基本ソフト)のアイデアから影響を受けた。そのマックに影響されたのが、マイクロソフトのウィンドウズ。グーグルの携帯電話向けOS「アンドロイド」は、どう見てもiPhoneのパクリだ。

 シリコンバレーでは、貪欲なまでの吸収精神は憎しみとともに、敬意の対象でもある。94年、アップルのスティーブ・ジョブズはあるインタビューで、ピカソのこんな言葉を引用した。「いい芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」

 だが時代とともに、「盗み」をするのはずっと難しくなった。IT企業は自社の発明の特許を取るようになり、弁護団を雇って特許を守っている。携帯電話やタブレット型端末のメーカーが今、特許をめぐって訴訟合戦を繰り広げているのはそのせいだ。いずれの企業の製品も(必然的に)互いの発明の上に成り立っている。だが弁護団がいる以上、特許は守らなければならない。

 ウェブソフトの世界は今のところ、携帯端末の世界ほど特許にこだわらない。おかげで、フェースブックは欲しいものを取り放題。私としては、この状態が続くことを願う。どこかのSNSの優れもの機能を使うために、フェースブックをやめなくて済むから。

© 2011 WashingtonPost.Newsweek Interactive Co. LLC

[2011年9月28日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、国際水域で深海採掘へ大統領令検討か 国連迂回で

ビジネス

ソフトバンクG、オープンAIに最大5.98兆円を追

ビジネス

2月完全失業率は2.4%に改善、有効求人倍率1.2

ワールド

豪3月住宅価格は過去最高、4年ぶり利下げ受け=コア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中