パクリの達人、フェースブック
フェースブックは先週、もう1つの目玉機能も発表した。「フィード購読ボタン」の追加だ。これを使えば、相手が友達でなくても、関心のあるユーザーの更新情報を自分のページに表示させられる。何だか聞き覚えがある? そう、ツイッターで誰かをフォローするのと同じ仕組みだ。
交流は常に双方向──それがフェースブックの特徴であり、基本理念の1つだった。だがツイッターの成功で、理念も柔軟に変更することにしたのだろう。
同様の姿勢で付け加えた機能はほかにもたくさんある。位置情報を共有するチェックイン機能は、GPSの位置情報を利用したSNS「フォースクエア」とそっくり。チェックインクーポンは共同購入サイトのグルーポン、クエスチョン機能は質問を書き込むと誰かが答えてくれるSNS「クオーラ」と似ている。
『スター・トレック』ファンなら、目を付けたものは何でも吸収・同化する機械生命体の集合体ボーグを思い出すはずだ。フェースブックはテクノロジーという宇宙を徘徊し、発見した最高のアイデアを無慈悲に吸収していく。
こうした姿勢には、2つの利点がある。アイデアのコピーによって、フェースブックは最大最強のSNSであり続けることができる。新たに取り込んだ機能のおかげでSNS市場の独占体制は強まり、ライバルは弱体化する。
ジョブズもたたえた盗用
一方、ユーザーにとっても利点が大きい。フェースブックは1つの主義にしがみつかない。ザッカーバーグの見方にもかかわらず、カタンゴはコンピューターによる友達分類法の効力を証明し、ユーザーはそれを歓迎した。ならば、自分も彼らが欲しがるものを与えればいいではないか?
模倣を繰り返してトップの座を守っていると言われれば、フェースブック側は怒るかもしれない。このSNSには、そもそもの始まりから盗用疑惑が付きまとっているのだから。とはいえザッカーバーグは、IT業界の長い「パクリの歴史」にも気付いているはずだ。この業界のトップ企業の一部は、発明と同じくらい盗用にたけている。アップルもマイクロソフトも、グーグルもそうだ。
革命的なデスクトップコンピューターだった初代マックは、ゼロックスのパロアルト研究所で生まれたコンピューターのOS(基本ソフト)のアイデアから影響を受けた。そのマックに影響されたのが、マイクロソフトのウィンドウズ。グーグルの携帯電話向けOS「アンドロイド」は、どう見てもiPhoneのパクリだ。
シリコンバレーでは、貪欲なまでの吸収精神は憎しみとともに、敬意の対象でもある。94年、アップルのスティーブ・ジョブズはあるインタビューで、ピカソのこんな言葉を引用した。「いい芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」
だが時代とともに、「盗み」をするのはずっと難しくなった。IT企業は自社の発明の特許を取るようになり、弁護団を雇って特許を守っている。携帯電話やタブレット型端末のメーカーが今、特許をめぐって訴訟合戦を繰り広げているのはそのせいだ。いずれの企業の製品も(必然的に)互いの発明の上に成り立っている。だが弁護団がいる以上、特許は守らなければならない。
ウェブソフトの世界は今のところ、携帯端末の世界ほど特許にこだわらない。おかげで、フェースブックは欲しいものを取り放題。私としては、この状態が続くことを願う。どこかのSNSの優れもの機能を使うために、フェースブックをやめなくて済むから。
© 2011 WashingtonPost.Newsweek Interactive Co. LLC
[2011年9月28日号掲載]