最新記事

ネット

フェースブックと中国ファンドの相思相愛

2011年8月2日(火)21時01分
マイケル・モラン

 中国からの投資がすべて、政治的な問題になってきたわけではない。例えば中国の住宅建設最大手である中国建築工程は、サンフランシスコのベイブリッジ建設の主要業者だったし、ニューヨークの地下鉄建設を請け負ったこともある。

 とはいえ、米企業に対する中国からの対外直接投資は、09年で7億9100万ドルと微々たる額に留まっている(同じ年にアメリカ企業は、中国に430億ドル以上を投資している)。
 
 それでも、フェースブックとの関係は中国に高配当以上の多大なメリットをもたらすはずだ。フェースブックは、中国共産党の検閲体制を別にすれば、グーグルの鼻を明かした唯一の存在。その世界最大の企業に出資できるチャンスなのだ。

 検索結果に対する中国当局の検閲を不服とするグーグルが昨年、中国からの撤退という大胆な決断を下すと、中国側はひどく困惑した。グーグルの共同創業者セルゲイ・ブリンは、自身がソ連で育った際の経験が、中国撤退の決断に大きく影響したと語っている。さらに、同社のサーバへのハッキングが明らかになったことが、決断の決め手となった。「全体主義的なやり方には我慢ができない」と、ブリンは当時語っていた。

 地球上のネットユーザーの数に限りがある以上、5ヶ月ごとに約1億人のペースで新規ユーザーが増えているフェースブックの成長にも、いずれは停滞期が訪れる。

 フェースブック最大のライバルであるグーグルが「グーグル+」を立ち上げてSNSの世界に本格参入したことで、競争はますます過熱している。グーグルの新サービスが本当に成功するのか、仮に成功したとしてもフェースブックのライバルになるのか、あるいは補完的な存在にすぎないのかという点を判断するのは、時期尚早だが。

中国語を学ぶザッカーバーグの思惑

 言うまでもなく、中国にとっての投資先の選択肢はフェースブックだけではない。だが、フェースブックには中国資本を受け入れたい理由がふんだんにある。同社にとって中国は、「最後のフロンティア」とも言うべき存在。09年にイランを揺さぶった「緑の革命」で革命ツールとしてのSNSの力が明白になって以来、中国当局はフェースブックへのアクセスを禁止している。

 フェースブックの創業者マーク・ザッカーバーグは、中国からの出資の噂が出回るずっと以前から、中国進出を視野に入れていた。昨年12月には、グーグル撤退の恩恵を最も被っている中国最大の検索エンジン「百度(バイドゥ)」の本社を訪問。中国語の勉強も続けており、昨年のあるスピーチでは「16億人の人々を置き去りにしたまま、世界をつなぐことなどできない」と語っている(正確には中国の人口は13億3000万人)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

海外勢の米国債保有、7月も過去最高の9.15兆ドル

ワールド

ウクライナ戦争後の平和確保に協力とトランプ氏、プー

ビジネス

中国、TikTok巡る合意承認したもよう=トランプ

ワールド

米政権がクックFRB理事解任巡り最高裁へ上告、下級
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中