フェースブックと中国ファンドの相思相愛
中国からの投資がすべて、政治的な問題になってきたわけではない。例えば中国の住宅建設最大手である中国建築工程は、サンフランシスコのベイブリッジ建設の主要業者だったし、ニューヨークの地下鉄建設を請け負ったこともある。
とはいえ、米企業に対する中国からの対外直接投資は、09年で7億9100万ドルと微々たる額に留まっている(同じ年にアメリカ企業は、中国に430億ドル以上を投資している)。
それでも、フェースブックとの関係は中国に高配当以上の多大なメリットをもたらすはずだ。フェースブックは、中国共産党の検閲体制を別にすれば、グーグルの鼻を明かした唯一の存在。その世界最大の企業に出資できるチャンスなのだ。
検索結果に対する中国当局の検閲を不服とするグーグルが昨年、中国からの撤退という大胆な決断を下すと、中国側はひどく困惑した。グーグルの共同創業者セルゲイ・ブリンは、自身がソ連で育った際の経験が、中国撤退の決断に大きく影響したと語っている。さらに、同社のサーバへのハッキングが明らかになったことが、決断の決め手となった。「全体主義的なやり方には我慢ができない」と、ブリンは当時語っていた。
地球上のネットユーザーの数に限りがある以上、5ヶ月ごとに約1億人のペースで新規ユーザーが増えているフェースブックの成長にも、いずれは停滞期が訪れる。
フェースブック最大のライバルであるグーグルが「グーグル+」を立ち上げてSNSの世界に本格参入したことで、競争はますます過熱している。グーグルの新サービスが本当に成功するのか、仮に成功したとしてもフェースブックのライバルになるのか、あるいは補完的な存在にすぎないのかという点を判断するのは、時期尚早だが。
中国語を学ぶザッカーバーグの思惑
言うまでもなく、中国にとっての投資先の選択肢はフェースブックだけではない。だが、フェースブックには中国資本を受け入れたい理由がふんだんにある。同社にとって中国は、「最後のフロンティア」とも言うべき存在。09年にイランを揺さぶった「緑の革命」で革命ツールとしてのSNSの力が明白になって以来、中国当局はフェースブックへのアクセスを禁止している。
フェースブックの創業者マーク・ザッカーバーグは、中国からの出資の噂が出回るずっと以前から、中国進出を視野に入れていた。昨年12月には、グーグル撤退の恩恵を最も被っている中国最大の検索エンジン「百度(バイドゥ)」の本社を訪問。中国語の勉強も続けており、昨年のあるスピーチでは「16億人の人々を置き去りにしたまま、世界をつなぐことなどできない」と語っている(正確には中国の人口は13億3000万人)。