最新記事

電気自動車

日産リーフの感動はiPodを超える

プリウスと競合できる3万ドル以下の価格設定で、電気自動車戦争のトップに踊り出た

2010年4月1日(木)17時31分
マシュー・デボード

究極のエコカー 100%電気で動くリーフはアメリカ人消費者を虜にできるか(写真は今年1月にデトロイトで開催された北米国際自動車ショー) Mark Blinch-Reuters

 日産自動車は、今年後半に販売を開始する電気自動車「リーフ」の日本での販売価格を4万ドル弱(376万円〜)と発表した。これを受けて、トヨタ・プリウスと競合する3万ドル以下の低価格でアメリカ市場に殴り込みをかけるという日産の計画は流れた、と誰もが思ったものだ。
 
 とんでもない! 3月30日、日産がアメリカでのリーフの販売価格を3万2780ドル(約304万円)という低価格に設定すると発表すると、業界に衝撃が走った。この価格なら、リーフはプリウスに十分対抗できる選択肢となる。ゼネラル・モーターズ(GM)は、プラグイン・ハイブリッド車「シボレー・ボルト」の価格設定戦略を見直す必要に迫られる。

破格の値段で業界に衝撃

 3月30日付けのクリスチャン・サイエンス・モニター紙は次のように伝えている。


自動車業界アナリストの噂話や、複数の燃費実験の結果を総合すると、昨年12月の時点でもまだ、日産が発売を予定している電気自動車は平均的な自動車購入者にとっては高価すぎるだろうと予想されていた。だがここに来て、この日産車が3万ドル以下で発売されることがわかった。2015年までにアメリカで100万台の電気自動車を走らせるというオバマ大統領の目標を実現するには、(この3万ドルのラインは)重要な分かれ目だ。

「(リーフの)価格を聞いて興奮したよ。たくさん売れて、アメリカを救うことになるから」と話すのは、電気自動車の発展を支える支援団体プラグ・イン・アメリカのポール・スコット副会長。「(携帯音楽端末の)iPod以上の口コミが期待できる」


 あるいは、4月3日に発売されるiPad以上と言うべきか。この数カ月間、アップル社のタブレット端末iPadをめぐっては、さまざまな口コミが飛び交ってきた。

 リーフの価格設定について、クリスチャン・サイエンス・モニターはこうまとめている。


 日産は、一回の充電で100マイル走行できる5ドアの小型車リーフのアメリカでの販売価格を3万2780ドルに設置すると発表した。連邦政府による7500ドルの税控除を差し引くと、実質的な価格は2万5280ドル。これは、ホンダのシビックやトヨタのプリウスと並ぶ価格帯だ。ジョージア州やカリフォルニア州などでは、州からさらに5000ドルの還付を受けられるため、消費者の負担は2万ドルあまりで済む。

 充電が心配? その点も大丈夫だ。
 



 自宅のガレージにある通常の110ボルトのコンセントを使えば、一晩で充電できる。あるいは、220ボルトの急速充電器(2200ドル)を購入すれば、4〜5時間で充電が完了する。しかも、充電器代の半額は税還付で相殺される。


第1ラウンドはリーフの勝利

 ウォルマートやスターバックスの駐車場で安価で充電できるようインフラ整備が進むのなら、自宅での急速充電の需要は大してないと個人的には感じている。だが、先のことはわからない。ノート型パソコンや携帯電話を充電するのと同じ要領でリーフを充電できる(時間はかかるが)という事実には、大きな意味がある。

 州から購入代金の一部払い戻しを受けられるカリフォルニア州では、リーフの競争力は高い。これは日産にとって、極めて重要なポイントだ。プリウスがまさにそうだったように、発売初期のカリフォルニアでの評判が、全米の売れ行きに大きく影響するからだ。電気自動車には温暖な気候が適しているため、物理的な意味でもカリフォルニアは理想的な場所だ(ただし、リーフはすべての機能を電気で動かすため、ロサンゼルスのドライバーの8月のエアコン使用状況は別の課題をもたらすかもしれないが)。

 以前から言ってきたように、2010年は電気自動車の年で、大手自動車メーカーによる電気自動車戦争が勃発している。理屈の上では、電気とガソリンのハイブリッド車であるGMのシェビー・ボルトが最高だ。

 だが、リーフは100%電気だけで動くうえに、価格は3万ドル以下。電気自動車戦争第一ラウンドは、リーフの勝利のようだ。

*The Big Money特約
http://www.thebigmoney.com/

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国の新規銀行融資、11月は予想下回る3900億元

ビジネス

仏ルノー、モビライズ部門再編 一部事業撤退・縮小

ビジネス

ECB、大手110行に地政学リスクの検証要請へ

ワールド

香港の高層住宅火災、9カ月以内に独立調査終了=行政
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中