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金融危機ドバイは湾岸のリーマンだった
自由が仇に 悪いところまでウォール街に似ていたドバイ Reuters
アラブ首長国連邦のドバイは経済発展の新しい形として湾岸地域、そして世界のモデルになるはずだった。だが、その「モデル」もどうやら欠陥品だということが分かってきた。
市場開放を嫌う中東において、ドバイは投資家たちが自由になれるオアシスのような存在で、競争力も備えていると評価されてきた。石油資源のないドバイは資源成り金たちの現金を吸収することで成長。しかし、あぶく銭を奪われて桁違いの負債を抱えたドバイの競争力は徐々に低下してきている。
好景気の間に台頭した多くの企業と同様、ドバイは商業不動産に依存した世界的バブルと多額の負債を原動力にしてきた。ところが11月末には、政府系企業の債務590億ドルの返済延期を要請。今のドバイは、08年に世界の金融システムを麻痺させたあの企業、リーマン・ブラザーズにそっくりだ。
短期の借り入れで長期の投資
リーマンと同じく、ドバイは長期的な非流動資産を購入するために短期の借り入れを行うという過ちを犯した。
政府系投資会社ドバイ・ワールドとその傘下の不動産会社ナキールは世界の資本市場から数百億ドルを借り入れ、その資金をカナダのエンターテインメント集団シルク・ドゥ・ソレイユや米高級百貨店バーニーズ、ヨット事業や金融サービス企業、そして何より不動産の買収に充てていた。リーマンも同じように、数百億ドルの借入金を商業用オフィスビルや共同住宅地などの非流動資産に投じていた。
リーマンが商業手形市場、債務担保証券など金融工学のあらゆる新型商品を利用したように、ドバイも土木工学のあらゆる新技術を登用した。ヤシの木の形に埋め立てた人工島や、屋内スキー施設、世界一の超高層ビルの建設などだ。
見捨てられると思わなかった
理論上は、リーマンはコーポレート・ガバナンス(企業統治)のモデルだった。経験豊富なトップを監督する取締役会が一般株主を代表するはずだった。だが実情は外部の利害関係者を軽視し、内部関係者のために運営された独裁政権だった。ドバイでも、主要企業は王族とその一派の管理下にある。
リーマンは、米政府や投資銀行仲間が自分たちの破綻を見過ごすことなどまったく想定していなかった。同じように市場も、そして恐らくドバイ政府もこう見込んでいる──アラブ首長国連邦という石油大国が、首長国の1つであるドバイの負債に救済の手を差し伸べるだろう。だが今のところ、ドバイへの緊急援助の兆しはない。
もう1つ、リーマンとドバイの共通点がある。両者とも自分たちは大き過ぎてつぶせないという幻想を抱いていたことだ。
[2009年12月16日号掲載]