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危機の第3幕は国家の財政破綻か

ソブリンリスク危機

アメリカや日本にも忍び寄る
ギリシャ型「政府債務信用不安」の実相

2010.07.05

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危機の第3幕は国家の財政破綻か

2010年7月5日(月)12時10分
シュテファン・タイル(ベルリン支局)

 世界経済危機の第1幕が銀行危機で、第2幕が景気後退だったとすれば、最終幕は国家の財政危機だろう。IMFによると、先進国の政府債務の対GDP比は、08年に75%だったのが14年までに115%という過去最高の水準に膨れ上がる(60%が一般に維持可能な水準といわれている)。

 政府債務を維持可能な水準まで減らすための道程として、IMFは9月にこんな数値を発表した。10年に各国平均3・5%と見込まれる財政赤字を20年までに4・5%の財政黒字へと転換させ、さらにその後10年間は、事業の凍結や給付の削減で黒字レベルを維持しないといけない──。ただし、それほどの緊縮財政を実行できた惑星はまだ発見されていない。

 世界経済を引っ張る先進国経済が、同時に莫大な財政赤字を抱え込むとどうなるのか。天井知らずのインフレから日本型低成長の「世界拡大版」まで、予想されるシナリオはさまざまだ。1930年代以降、先進国が債務不履行に陥ったことはないが、その歴史も変わるかもしれない。

 IMFのエコノミストは、これまで先進諸国が巨額の債務に耐えてこられたのは、投資家にとって自国の市場から資金を移す選択肢が少なかったからだと言う。

 今は新興国がますます多額の資本を受け入れることができるようになった。中国やインド、ブラジルが投資家の避難先となる日も近い。そうなれば先進国の財政危機や債務不履行が起こりやすくなるかもしれない。グローバル化の皮肉な一面だ。

[2009年10月21日号掲載]

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