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南アを悩ませるエリート空洞化

南ア、虹色の未来へ

アパルトヘイト撤廃から16年
驚異の成長、多人種社会の光と闇

2010.06.11

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南アを悩ませるエリート空洞化

会計士、医師、看護師、技術者……。暴力の蔓延や政治的な混乱を引き金に若い高学歴専門職の国外脱出が止まらない

2010年6月11日(金)12時03分
スコット・ジョンソン(アフリカ総局長)

混乱が続く隣国のジンバブエなら、とくに驚くような話ではない。しかし、アフリカ諸国のなかで最も豊かで経済が発展している南アフリカで、少数派の白人を中心とする人材の国外流出が起きているというのは意外な気がする。

 南アフリカには、信頼できる移民の公式統計が存在しない。しかし複数の民間調査によれば、ほとんどの国では世界金融危機の影響で国外移住の勢いが鈍っているというのに、南アフリカでは高学歴の若い専門職の人材流出に歯止めがかからない。

 南アフリカ人種関係研究所の調査によれば、とくに白人の間ではこれまでも「疾病の蔓延、甚大な自然災害、大規模な国内騒乱」のたびに大量の国外脱出が起きている。95年以降、白人の総人口400万人のうち約80万人が国を去ったという説もある。

 同様の動きは黒人やカラード(白人と非白人の混血)、インド系にも広がっている。大卒以上の学位を取得した南アフリカの黒人は過去12年間で36万人から140万人に増加したが、外国への移住を切望する人数も2倍に増えた。

 94年のアパルトヘイト(人種隔離政策)廃止後、新生・南アフリカは多くの面で人種間の融和と均衡ある発展を実現してきた。進歩的な憲法と経済政策、豊富な人材と資源を武器に、社会はまずまずの安定を保っている。だが現在のペースで人材流出が続けば、その安定は揺らぎかねない。

 アパルトヘイト廃止後の時期も含め、南アフリカでは過去数十年間、国外移住の大きな波があった。移住の動機は見知らぬ土地への憧れもあるが、政治的安定や経済的機会との関係も見逃せない。

 さらに今では暴力犯罪の蔓延や深刻な政治的混乱、経済のグローバル化が国外流出に拍車をかけている。さまざまな人種、年齢の男女600人を対象に行われた昨年5月の世論調査では、20%が外国へ移住する予定だと答えた。

「大量移住の新たな波が到来しつつある。今回の動きは全人種に広がっている」と、世論調査機関フューチャー・ファクトは別の報告書で警告している。

 全人種、とくに今も国の大半の富を保有する白人にとって、移住の大きな理由は犯罪への懸念だ。1日の殺人件数が50件を超える南アフリカは、国民1人当たりの殺人発生率が世界で最も高い国の一つ。レイプ事件も、シエラレオネやコロンビア、アフガニスタンといった紛争地並みに多い。フューチャー・ファクトの調査では、国外移住希望者の95%以上が暴力犯罪を最大の動機にあげている。

 ネパッド・ビジネス・グループのCEO(最高経営責任者)で中国系のリネット・チェンは、家族全員が外国に逃げ出したと話す。自動車強盗に2度あった両親は02年に国を去り、やはり犯罪の被害者になった兄弟もすぐに後を追った。「みんな戻りたがっているけれど、犯罪が減るまで帰らないと思う」と、チェンは言う。

不安定な政情が引き金に

 あまり注目されない別の問題もある。白人農家に対する襲撃の増加だ。ジンバブエのように人種対立が襲撃の動機になっているケースも一部にはあるが、単なる便乗犯も多い。いずれにせよ白人農家がこのまま減り続ければ、技術力のある農家の国外流出で農業そのものが崩壊したジンバブエの二の舞いになりかねない。

 黒人の経済的権利の向上(BEE)政策と呼ばれる人種間の格差是正措置も国外流出の一因だ。白人の間では就職や昇進の機会を制限されているという意識が強く、それが国外移住者の帰国を阻んでいる。「肌の色が違うと犯罪にあい、仕事のチャンスにも恵まれない」と、チェンは言う。

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