最新記事

新味なき鳩山所信表明の新味

オブザーヴィング
鳩山政権

話題の日本政治学者
トバイアス・ハリスが現在進行形の
「鳩山革命」を分析する

2009.10.26

ニューストピックス

新味なき鳩山所信表明の新味

所信表明に目新しい話はなかったが、鳩山がどんな首相になろうとしているかという ビジョンは浮かび上がってきた

2009年10月26日(月)16時00分

[2009年10月28日更新]

 鳩山新政権にとって初の国会となる第173臨時国会が10月26日、鳩山由紀夫首相の所信表明演説で幕を開けた。民主党議員が圧倒的多数を占める議場で、鳩山は「無血の平成維新」を宣言。黒船や敗戦による圧力がないなかで変革を断行すると語った。

 演説の中身は聞きなれた話ばかりだ。鳩山はまず、民主党が選挙中から訴えてきた「政権交代」(今回の演説では「戦後行政の大掃除」という表現を使った)と「国民の生活を守る政治」の理念をあらためて表明。政策決定プロセスを見直し、官僚依存の仕組みを変える計画を説明し、カネの使い道を「コンクリートから人へ」シフトするとも語った。

 外交では、日本が国際社会の「架け橋」になるという主張がまたも登場した。「対等」な日米関係を築くという主張も繰り返し、温暖化対策や核不拡散などのグローバルな課題で日本が指導力を発揮するとした。言いかえれば、在日米軍の移転問題のような安全保障以外の分野で、アメリカと対等の関係をめざすという意味だ。

「指揮者」に徹して閣内をまとめる

 鳩山政権がめざす政治の姿についても目新しい話はほとんどなかったが、鳩山がどんなタイプの首相になろうとしているのかというビジョンは浮かび上がってきた。

 組閣が発表された9月半ばに私が書いたように、鳩山は重量級の閣僚をそろえた内閣において「大統領というより委員会の議長」をめざしているようにみえる。そして、数人の重要閣僚を「閣内内閣」として重用している。

 朝日新聞が新政権の特徴として挙げたように、鳩山内閣ではまず閣僚が問題を提起してメディアの反応を伺う。そのうえで鳩山は、副総理兼国家戦略担当相の菅直人と官房長官の平野博文、行政刷新担当大臣の仙石由人と相談しながら、どの政策を追認するか決定する。目下、来年度予算の概算要求を大幅削減するという試練が待ち受けているが、こうした政策決定の基本パターンが変わる可能性は低いと思う。

 鳩山は自身を「指揮者のような」首相と呼んでいる。彼が率いるオーケストラは亀井静香が加わるととくに不協和音を奏でることもある。だが、諸問題について閣僚がオープンに意見を戦わせるアプローチは、官僚が秘密裏に議論する方法より健全だ。もちろん、鳩山流で本当に政策を実現できるのかについてはまだ未知数だが。

 指揮者としての鳩山は今後も、政策については腹立たしいほど曖昧な演説を繰り返すだろう。だが彼のスピーチには、ほかの閣僚や民主党の議員たち、そしてすべての国民に政権の使命を思い起こさせる力がある。

 ゆっくりと、しかし確実に、鳩山政権の新しい政治の形が見え始めてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から

ワールド

北朝鮮が約10発の弾道ミサイル発射、東海岸沖の海に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド太平洋防衛
  • 4
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 5
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 6
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 7
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈…
  • 8
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 9
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 10
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中