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EU加盟はここがおトク
ピンからキリまでの生徒が机を並べた教室で、リーダー格の数人がクラブを結成。固い結束で連絡を密にし、お互い成績アップに努めようと誓い合った。そのクラブの名はEU(欧州連合)だ。
今やクラスメイトが僕も私もと入りたがる超人気クラブに成長した。部員は現在27人。入部するにはいろいろと条件があってたいへんだが、苦労してでも入りたくなるだけの魅力があるらしい。
EUのルーツは1957年にさかのぼる。まず西ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの6カ国が集まった。73年にはイギリスなど3カ国が仲間入り。その後、北欧やバルカン諸国、東欧からも参加が相次ぎ、加盟国は今年1月で27カ国になった。総人口は4億9000万人で、アメリカの1.6倍もある。
ヨーロッパという教室の生徒は、なぜこれほどEUクラブに入りたがるのか?
世界最大の経済クラブに入ればハクがつくというメリットもあるが、いちばんのお目当てはやはり「特権」だろう。クラブ内では人やモノの移動に壁がない。人々はどの国にも自由に旅行し、住むことができる。製品はどの国でも同じ基準で認証される。99年には単一通貨ユーロができて、お金を両替する必要もなくなった。
だからEUに入れば、経済活動が活発になってリッチになりやすい。実際、加盟した国はほかの国がうらやむほどの成長を遂げた。イギリスと北欧は好景気に沸き、東欧の加盟国の経済成長率は年平均5%のペースで伸びている。
EUは拡大を続け、今もクロアチアなどが加盟をめざして準備中。そんななか、メンバーが増えすぎて不満をもらす古参の部員もいる。たとえば移民の問題。東欧の新加盟国、とくにポーランドからは西欧に続々と移民がやってくる。移民に職を奪われたり、治安が悪くなるといった苦情も出ている。
それだけに新規加盟の条件は厳しい。民主主義の国になることはもちろん、経済を安定させ、人権を守り、法律をしっかり機能させる──。こうした「成績基準」を満たさないといけない。
メンバーが増えることは、実は今の部員にとってもメリットが大きい。加盟したい国は成績基準をクリアしようと努力し、メンバー同士も互いに競い合う。つまり、平和的な民主主義や活発な市場経済が、ヨーロッパ中にひとりでに浸透していくのだ。
[2007年10月24日号掲載]