最新記事

EU加盟はここがおトク

岐路に立つEU

リスボン条約発効、EU大統領誕生で
政治も統合した「欧州国家」に
近づくのか

2009.10.23

ニューストピックス

EU加盟はここがおトク

2009年10月23日(金)12時52分

 ピンからキリまでの生徒が机を並べた教室で、リーダー格の数人がクラブを結成。固い結束で連絡を密にし、お互い成績アップに努めようと誓い合った。そのクラブの名はEU(欧州連合)だ。

 今やクラスメイトが僕も私もと入りたがる超人気クラブに成長した。部員は現在27人。入部するにはいろいろと条件があってたいへんだが、苦労してでも入りたくなるだけの魅力があるらしい。

 EUのルーツは1957年にさかのぼる。まず西ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの6カ国が集まった。73年にはイギリスなど3カ国が仲間入り。その後、北欧やバルカン諸国、東欧からも参加が相次ぎ、加盟国は今年1月で27カ国になった。総人口は4億9000万人で、アメリカの1.6倍もある。

 ヨーロッパという教室の生徒は、なぜこれほどEUクラブに入りたがるのか?

 世界最大の経済クラブに入ればハクがつくというメリットもあるが、いちばんのお目当てはやはり「特権」だろう。クラブ内では人やモノの移動に壁がない。人々はどの国にも自由に旅行し、住むことができる。製品はどの国でも同じ基準で認証される。99年には単一通貨ユーロができて、お金を両替する必要もなくなった。

 だからEUに入れば、経済活動が活発になってリッチになりやすい。実際、加盟した国はほかの国がうらやむほどの成長を遂げた。イギリスと北欧は好景気に沸き、東欧の加盟国の経済成長率は年平均5%のペースで伸びている。

 EUは拡大を続け、今もクロアチアなどが加盟をめざして準備中。そんななか、メンバーが増えすぎて不満をもらす古参の部員もいる。たとえば移民の問題。東欧の新加盟国、とくにポーランドからは西欧に続々と移民がやってくる。移民に職を奪われたり、治安が悪くなるといった苦情も出ている。

 それだけに新規加盟の条件は厳しい。民主主義の国になることはもちろん、経済を安定させ、人権を守り、法律をしっかり機能させる──。こうした「成績基準」を満たさないといけない。

 メンバーが増えることは、実は今の部員にとってもメリットが大きい。加盟したい国は成績基準をクリアしようと努力し、メンバー同士も互いに競い合う。つまり、平和的な民主主義や活発な市場経済が、ヨーロッパ中にひとりでに浸透していくのだ。

[2007年10月24日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中