最新記事

中国が問われるリーダーの資格

ポスト胡錦濤の中国

建国60周年を迎えた13億国家
迫る「胡錦濤後」を読む

2009.09.29

ニューストピックス

中国が問われるリーダーの資格

専門家の間で中国をアジアの盟主扱いする論調が高まっているが、GDPと軍事力だけでは超大国にはなれない

2009年9月29日(火)12時57分
クリスチャン・カリル(東京支局長)

 アジアと欧米の専門家の間で、「ついに中国の時代がやって来た」という声が高まっている。

 アメリカは深刻な景気後退に苦しみ、出口の見えない2つの戦争で傷ついたイメージの回復を図っているところだ。それを尻目に中国は着々と影響力を伸ばしている。

 今の中国は自信満々だ。4月半ばの博鰲(ボアオ)アジアフォーラム(ダボス経済フォーラムの中国版)でも、中国の代表は低姿勢を保つ一方で、金融危機を招いた米政府の失政をあげつらい、米ドルに代わる新たな国際決済通貨の創設を呼び掛け、世界の経済体制における自国の役割拡大を要求した。

 さらに数日後、中国海軍は創設60周年記念式典で2隻の原子力潜水艦を初めて公開し、影響力を太平洋とその先の海域まで拡大しようとする意思を明確にした。

 一方、中国の台頭に対する他国の反応は驚くほど静かだ。1人当たりGDP(国内総生産)が中国の10数倍ある日本も例外ではない。20カ国・地域(G20)首脳会議などの国際会議で影の薄い日本と指導的役割を果たす中国――この両国の構図も、日本では当然のこととして受け止める向きが多い。

 世界の指導者は中国を経済成長で勢いづく超大国と見なし、こっそりと頭を下げるケースが増えている。フランスのニコラ・サルコジ大統領は4月、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と会ったことを中国の胡錦濤(フーチンタオ)国家主席にわびた。アメリカは中国の為替操作に対する批判を引っ込めた。

 イギリスから韓国まで、世界中の新聞は中国を新たな世界の盟主になる国として持ち上げ始めた。イギリス人ジャーナリストのマーチン・ジャクスは最近のガーディアン紙で、上海はもうすぐニューヨークに代わる「世界の金融センター」になると予測した。

 南カリフォルニア大学(USC)の政治学者デービッド・カンは、中国中心の世界秩序は安定と成長をもたらす可能性があると指摘する。カンによれば、アジアでは過去2000年間の大半を通じ、中国の支配を日常的な現実として受け入れてきた。

 しかも、かつての中華帝国は周辺諸国に臣下の礼と朝貢を求めるだけで、それ以外の点には寛容だった。「歴史的に見て、中国の強大化は危険だと決め付けるのは早計ではないか」と、カンは言う。

日中軍事対決の可能性

 それでも疑問は残る。中国は世界の超大国やアジアの地域大国になる準備が本当にできているのか。

 現在のアジアは多極化と混沌の時代で、国家間の序列は曖昧になっている。中国は経済規模こそ巨大になったが、1人当たりGDPや社会基盤の整備状況はアジアの盟主と呼ぶには程遠い。

 イギリス人ジャーナリスト、ビル・エモットは近著『アジア三国志』(邦訳・日本経済新聞出版社)で、中国の成長は非効率な投資、過剰な外貨準備、深刻な環境汚染のせいで足を引っ張られていると指摘した。中国の温家宝(ウェン・チアパオ)首相も07年、中国には「不安定、不均衡、不協調、持続不可能な」構造的問題が存在すると認めている。

 中国式の国家モデルはアジアのライバルより優れているとは言い難い。日本は中国に比べ、はるかに汚職が少なく、役人もまともだ。ハイテク分野では中国を圧倒的にリードしている。

 日本の輸出主導型経済は世界的な景気後退で大打撃を受けたが、企業は巨額の資金を投じて研究開発を続けている。日本は現在、環境に配慮したエコカーの分野で世界のトップを走る。一方、中国はようやく競争に参加したばかりで、日本に追い付くのは容易ではない。

 自国を「複数のクジラ(周辺の大国)の間に挟まれたエビ」になぞらえる韓国も、侮れない存在になった。現在の韓国は世界で最もハイテク化が進んだ国の1つだ。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)や全米製造業者協会などが発表する国際イノベーション力指標によれば、韓国は世界第2位。中国は27位だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア大統領、無料給食継続 反対運動に「立ち

ビジネス

ドイツ銀、プライベートバンクで新興国人員拡充 最大

ビジネス

台湾の2500億ドル対米投資、企業が「自発的に判断

ビジネス

業績発表後予想外の株価変動でもうかる米オプション取
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 7
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 8
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 9
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中