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米住宅バブルの崩壊始まる
都市部の大半で住宅価格が下落し、「不動産頼み」の経済成長に終わりが見えてきた
アメリカの住宅ブームに終わりが見えてきた。最近までの米経済は「不動産頼み」だった。国税調査局の先週の発表によれば、住宅価格の中央値は00~05年の5年間で32%上昇(インフレ調整済み)。サンディエゴ127%、ロサンゼルス110%、ニューヨーク79%というように、著しく値上がりした地域もある。
不動産はまるで貯金箱のように思えた。担保となる住宅の値上がりを見込んだ消費やローンの借り入れが増えたのも無理はない。だが、このシナリオはもう通用しそうにない。不動産神話の崩壊は、ダウ平均株価が最高値を記録したり石油価格が下落するよりも、米経済に差し迫った影響を及ぼすだろう。
住宅ブームは自ら崩壊のタネをまいたといえそうだ。住宅価格と金利の上昇によって、住宅を買いたくても買えない人が増えている。全米不動産協会(NAR)によると、03年の中古住宅価格の中央値は18万200ドルで、世帯の年間所得が4万320ドルあれば買えた。それが今年8月には22万5700ドルに上昇、5万6544ドルの年収が必要だという。
変動金利型ローンに苦しむ
買い手が減った不動産市場で、8月の住宅着工件数は前年比で20%減少した。新築・中古住宅の販売件数は昨年は840万戸近かったが、来年は740万戸に減るとNARは予測する。住宅を担保にしたローンを車やパソコンの消費に回す人が減るだろう。そのうえ住宅ブームを支えた低金利の終焉で、住宅保有者にはローン返済が重くのしかかることになる。
残高10兆ドル近い一戸建て向け住宅ローンのうち、4分の1が毎年金利が見直される変動金利型だ。03~04年には最初の3~5年間金利を固定する「ハイブリッド型」が人気だったが、その金利が引き上げられる時期に来ている。03年に金利4%で20万ドル借りたときは月々の返済は955ドル。今では金利7.5%で返済額は1362ドルに増えた。30年固定型に借り替えても金利は6.25%に上がる。
となればローンを払うために、消費を引き締めなければならない人もいるだろう。個人可処分所得に占める債務支払いの割合は07年に史上最高の15.6%に達すると、コンサルタント会社エコノミック・アナリシス・アソシエーツのスーザン・スターンは言う。英投資銀行大手HSBCは「景気後退リスク」を警告する。
では住宅価格の上昇が投機バブルだったのかというと、専門家の見方は分かれる。ジョージ・ワシントン大学の経済学者リチャード・グリーンは、価格の上昇は長期金利の低下を反映したものだという。金利が下がれば、それだけ払える金額が増える。
私もほぼ同じ意見だ。低インフレが長期金利の低下につながった。05年の30年固定型の住宅ローン利率は約6%(00年は7.5%、95年は8%だった)。
投機的な動きも確かにあった。05年に購入された住宅の約40%が、投資あるいは休暇のためのセカンドハウスだったという調査結果がある。グローバルインサイト社とナショナル・シティ社共同の調査では、主要都市圏317カ所のうち、00年初めに住宅価格が過大評価されていると判断されたのは63カ所だった。06年半ばには236カ所に増え、うち79カ所は34%以上の過大評価とみなされた。
大恐慌以来初の値下がりへ
住宅価格が適正に落ち着いても、消費者が支出を増やすことはないだろう。その喪失分を輸出増加やビジネス関連の投資で補えるうちはいい。
しかしNARの最新調査によると、住宅価格は前年同期比で1.7%下落している。ムーディーズ・エコノミー・ドット・コムの予測でも、主要都市圏100カ所で値下がりし、来年には平均3.5%下がるという。同社の主任エコノミスト、マーク・ザンディによると、住宅価格が年間を通じて下がるのは1929年の大恐慌以来、初めてになる。
真の危険はそこに潜んでいる。住宅価格が下がりすぎたり、下落傾向が長引けば、失われた信頼感と個人消費への悪影響を回復するのは容易ではない。
[2006年10月18日号掲載]