最新記事

英語キッズの上手な育て方

英会話の科学

語彙力アップのコツ、英語キッズの育て方
メールと電話のビジネス英語、ほか

2009.07.30

ニューストピックス

英語キッズの上手な育て方

日本の公立小学校で英語が必修科目になれば「英語オンチ」は返上できる?

2009年7月30日(木)13時57分
秋山悦子(東京)、ポール・ムーニー(北京)、森下圭子(ヘルシンキ)、リー・ダナフ(ニューヨーク)、ウィリアム・アンダーヒル(ロンドン

教育

 マイ・ネーム・イズ・アレン。そう話しかけてきた12歳のプー・チェンは、アメリカなまりの英語で元気に話しだした。家は四川省の成都にあって、35時間かけてここまで来たんだ......。

 今年8月、北京で開かれた中国初の大規模な英語スピーチ大会でのこと。約5万人が参加した大会の小学生部門で、チェンは予選を突破して準決勝に進出した。

 英語は地元の大学生に3カ月間特訓してもらったという。公園やマクドナルドで自発的に開かれている勉強会にも週1回参加した。「英語が話せないなんて、耳や口が使えないのと同じだから」と、チェンは言う。大会には日本の子供も参加したが、中国の子供たちに比べると影が薄かった。

 中国では今、「英文熱」が巻き起こっている。子供向けの英語教室が次々に誕生し、書店には英語教材があふれている。街中で外国人を見つければ、親は子供を押し出して英会話の「実習」をさせようとする。都市部の小学校では、小学低学年から英語を教えている。

 2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟し、08年の北京オリンピック開催が決まったことで中国人の意識は変わったと、スピーチ大会を共催した中国教育国際交流協会の林佐平(リン・ツオピン)は言う。「中国が国際社会で果たす役割は大きくなっている。私たちも、母語だけに頼っているわけにはいかない」

 そんな大げさな、と思う人も多いだろう。確かに、英語さえ話せればグローバル化の波に乗り遅れずにすむ、というのはあまりに短絡的な発想だ。しかし現実には、外国語教育の早期化は世界的なトレンドになっている。

 韓国は97年、小学校に英語の授業を導入した。台湾では、英語の授業を始める時期を5年生から3年生に早めようとしている。加盟国の全市民が母語以外に2言語を話せるよう提言しているEU(欧州連合)でも、外国語の授業はたいてい9歳以前に始まる(EUには公用語が20言語ある)。

 大阪大学の大谷泰照名誉教授が45カ国を対象に行った調査によれば、公立学校で11歳まで外国語の授業を行っていないのは、日本とオーストラリアだけだった。

 焦っているのは日本も一緒だ。文部科学省は昨年3月、「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」を発表。今年3月には中央教育審議会(中教審)が、小学校に英語を科目として導入するための検討を始めた。来年3月までに結論を出す予定で、導入が決まれば数年後にはすべての小学校で英語の授業がスタートする。

 ただ、小学校に英語を導入することには反対意見もある。批判派が危惧するのは、教師や学級の人数など、今の日本の小学校には英語の授業を全面的に導入するための基盤が整っていないことだ。英語が中学入試の科目になって、受験競争がますます過熱しかねないと懸念する声もある。

 「小学校でやることに反対ではないけど、ゆとり教育のせいで減っている他の科目の授業がさらに削られるのは困る」と、西東京市に住む金澤信幸は言う。4年生の娘はすでに「総合的な学習の時間」で英語を学んでいるが、「今のような内容だとお遊びでしかない気がする」と、金澤は言う。

 それでも、英語教育の早期化をめざす動きは止まりそうにない。賛成派がその理由としてあげるのは、日本をめぐる環境の変化だ。

 「これからの国際貢献はお金を出すだけではだめ。知的な貢献が大事で、そのためには世界共通語である英語でコミュニケーションできなくてはいけない」と、4月に開校した国際教養大学(秋田県)の中嶋嶺雄学長は言う。同校は専任教員の6割強を外国人が占め、授業はすべて英語で行っている。

 ヨーロッパの国々が早期教育に熱心なのも、似たような危機意識をもっているからだ。「異なる背景の人が一緒に暮らしていくには、互いの文化を知る必要がある」と、欧州委員会の教育・文化担当ポール・ホールズワースは言う。「そのためには、まず言葉を知らないと始まらない」

 問題は、学校で教えるのは本当に「早ければ早いほどいい」のかどうかだ。参考になりそうなのが、フィンランドの例だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB理事ら、インフレ警戒 利上げは慎重に見極め

ワールド

台湾輸出受注、2月23.8%増 予想下回る

ビジネス

ユニリーバの食品事業、米マコーミックが買収提案

ビジネス

アマゾンが再びスマホ開発、「Transformer
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 ──「成功」が招く自国防衛の弱体化
  • 4
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    原油高騰よりも米国経済・米株市場の行方を左右する…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中