最新記事

安くてクリーンな石油依存の脱し方

コペンハーゲン会議
への道

CO2削減と経済成長のせめぎあい
ポスト京都議定書の行方は?

2009.07.03

ニューストピックス

安くてクリーンな石油依存の脱し方

天然ガス自動車を普及させればエネルギー問題は一気に解決できる

2009年7月3日(金)12時38分
T・ブーン・ピケンズ(BPキャピタル創設者)

 三つの重要な課題が次期オバマ政権を待ち受けている。経済、安全保障、そしてエネルギーだ。

 このなかで唯一、政府が単独で対策を講じられるのがエネルギー問題。行動を起こせばすぐに直接的な効果を得られるし、ほかの二つ(経済と安全保障)に影響を及ぼす唯一の問題でもある。私の意見はこうだ。このエネルギー問題は天然ガスに重点的に取り組めば解決できる----。

 バラク・オバマ次期大統領にとって、新たなエネルギー政策を練るうえで最大の障壁になるのは「チープオイル」だろう。「チープ」の定義は変化した。原油価格が1バレル=50ドルを下回っていた2年前は、それを「安い」と思う人はいなかった。だが08年夏に150ドル近くまで高騰した後は、ドライバーは今の価格でさえ喜んでいる。

 原油の高騰でもなければ、アメリカは真剣に石油問題には取り組まない。環境保護の運動が本当の力を発揮したのは、ガソリン価格が1ガロン(約3・8リットル)=4ドルを突破してからだった。

 最近の原油価格の下落は一時的なものだと、私はみている。世界経済が立ち直り、需要が伸びれば価格はいずれ再び上昇する。著名なジャーナリスト、トーマス・フリードマンが新著『温暖化、フラット化、人口増加』で述べたように、今後も東欧、中南米、アジアでは中流層が拡大し続け、「アメリカ的なライフスタイル」を求めるだろう。そうなれば莫大なエネルギーが必要になる。

ガレージで燃料を補給

 アメリカは現在、石油の70%を輸入に頼っている。その費用は原油価格の変動により、年間3500億〜7000億ドル。2010年の中間選挙までに経済を活性化したいなら、新政権は今後2年間で7000億〜1兆4000億ドルと推測されるエネルギー消費を厳しく見直さなければならない。

 2年で輸入石油への依存から完全に脱却するのは不可能だが、半年ごとに削減目標を設定することはできる。削減目標を達成する道はただ一つ----商用車の燃料をガソリンやディーゼルから天然ガスに切り替えることだ。

 石油の採掘量を増やしても輸入は減らない。簡単に取れる国内の油田はすでに採掘されている。アメリカのエネルギー需要は1日当たり平均2100万バレルだから、アラスカや沖合に残された油田を採掘しても焼け石に水だ。

 一方、天然ガスは採掘・開発技術が進歩したおかげで、100年以上にわたって国内採掘分だけで供給をまかなえる。石油の自給率は下がっているが、北米大陸には豊富な天然ガスが眠っているのだ。

 問題はいかに活用するかだ。国を挙げて輸入石油から天然ガスに切り替えるべきだと私が講演するたびに、まず質問されるのがインフラの整備だ。この国を走るおびただしい数の自動車に天然ガス燃料を供給するには、どのようなインフラが必要なのか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

エアバス、A320系6000機のソフト改修指示 航

ワールド

米国務長官、NATO会議欠席か ウ和平交渉重大局面

ビジネス

NY外為市場=ドル、週間で7月以来最大下落 利下げ

ワールド

ウ大統領府長官の辞任、深刻な政治危機を反映=クレム
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 7
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中